小熊正久, 清塚邦彦編著『画像と知覚の哲学ー現象学と分析哲学からの接近』(2015)

画像と知覚の哲学―現象学と分析哲学からの接近

画像と知覚の哲学―現象学と分析哲学からの接近

メディアの発達と相まって多種多様な「画像」が日常を覆い尽くすように広がり、今や我々は画像を通じて世界を見ているとさえ言えよう。だが現物とは異なる画像の中に、我々はなぜ「現物」を見ることができるのか―本書は、この画像本来の「虚構性」、見ることと概念の総合が生む「像意識」、知覚・感覚作用が持つ「志向性」等、画像が孕む今日的問題群をめぐり、絵画はじめ芸術作品から様々の日常経験まで、多角的に分析・考察した力作論集である。

第1部 画像とは何か
1 画像表象と中立性変様―フッサールにそくして(小熊正久)
2 受動的経験としての像経験─フッサールから出発して(田口 茂)
3 演劇としての『像』―像の発生的現象学の観点から(伊集院令子)

第2部 絵画と芸術作品について
4 絵の中に見えるもの―見えるものと描かれたもの(清塚邦彦
5 絵画の知覚経験―メルロ=ポンティ『眼と精神』を手がかりにして(國領佳樹)
6 人間は「自画像」としての絵画に溢れた世界を生きる身体である―後期メルロ=ポンティ絵画論の位相(西岡けいこ)
7  サルトルの「芸術作品とは非現実的存在である」という主張をどのように受け止めるべきか(森 功次)

第3部 知覚について
8 カテゴリー的直観再訪─知覚的正当化の問題をめぐって(佐藤 駿)
9 経験における概念のゆくえ(村井忠康)
10 芸術鑑賞と知覚的カテゴライズ―ウォルトンの「芸術のカテゴリー」をめぐって( 亨)
11 アスペクトの転換において変化するもの―ウィトゲンシュタインの二つのアスペクトの分析を通じて(山田圭一)
12 痛みの経験は志向的か(小草 泰)
13 時間意識を介しての感覚と意味―フッサールの知覚論の動向(小熊正久)

37「単眼奥行き手がかり’monocular depth cues”」
●源河論文
193 ゲルニカ式, ウォルトン, 知覚的カテゴライズ
●小草論文
225 志向説とは「知覚的(および感覚的)経験がある現象的性格を持つということは、経験が何らかの志向的性質を持つこととして余すことなく説明される」「知覚経験は(心のうちに何か「内的な現われ」のようなものを持つことなどではなく、)外的な世界がかくかくのあり方をしているということを表象する心的状態の一種である。そして、誤った信念を説明するのに「内的/心的な信念対象」のようなものを導入する必要などない(ペガサスが存在するという信念を説明するのに、「心的なペガサス」など必要ない)のと同様に、幻覚的経験の現象的性格も、センスデータなどなしに、表象された世界のありように訴えることで説明される」
クレイン『心の哲学―心を形づくるもの』

心の哲学―心を形づくるもの

心の哲学―心を形づくるもの