ジョゼフ・コンラッド著,柴田元幸訳『ロード・ジム』(1900=2011)

 

ジムは船長番として、誰からも厚い信頼を得て仕事に励んでいた。しかし彼には隠された恐ろしい過去があった──かつて老朽船パトナ号の一等航海士だったジムは、800人の巡礼を乗せて航海中、嵐に遭って遭難する。船長らの誘いのままに、船や乗客を見捨てて救命ボートで脱出したジムは、審判の結果、航海士の免許を剥奪され、過去を隠して東南アジアの港を渡り歩くことに──海洋小説の名作を新訳で。

〈ぼくがこの作品を選んだ理由 池澤夏樹
成功するのはそうむずかしいことではないが、失敗からの回復は容易でない。とりわけ、世間のみなから軽蔑され、自分でも自分を軽蔑しなければならないような道義的な失敗の場合は。卑怯者に栄光はあるか? これは最も現代的な古典であり名作である。