小澤匡行著『1995年のエア マックス』(2021)

 

ファッション界を席巻するスニーカー。人気アイテムは国境を越えての争奪戦が起き、定価の数十倍で転売されるようになった結果、アメリカはもちろん、中国や中東など各国で富裕者層の所有欲求を満たすアイコンに。ネットにはスニーカーにまつわる情報が溢れ、株式のごとくリアルタイムで売買するマーケットまで成立した。『Boon』(祥伝社)や『UOMO』(集英社)で編集を務め、その栄枯盛衰を見てきた小澤氏は、その状況を見て「それはもはや私たちが知っているスニーカーではない」「ターニングポイントは日本で大ヒットしたナイキ『エア マックス 95』だった」と指摘する。業界の第一人者で、著書『東京スニーカー史』(立東舎)も好評を博した著者はこれまで、そしてこれからのスニーカーの行方をどう考えているのか? NBA、ヒップホップ、裏原宿、SNS――。スニーカーの先に、世界はある。

第1章 "テン"年代のスニーカー
世界に先駆けてブームを経験した国、日本/スマートフォンが生んだ気軽さ/本質の先に見えたベーシック/ウィメンズと市民権/デジタルネイティブが起こしたリバイバルブーム/セレブリティと 21世紀型ヒップホップカルチャー/中国人とインバウンド/聖地としての東京/EC とフェイク/需給バランスと転売ヤー/株式化したスニーカー/アプリとリセール

第2章 「シューズ」から「スニーカー」へ―90年代前半までに何が起きたか
日本独特のヴィンテージカルチャー/NBA とヒップホップカルチャー/マイケル・ジョーダンの登場「/エア ジョーダン 1」は本当にNBA のルールに抵触したのか/日本では評価されなかった初期エア ジョーダン「/エア ジョーダン 5」日本発売「/エア マックス」の進化/アディダスの本質回帰『/SLAM DUNK』とバルセロナ・オリンピック/ストリートバスケットがもたらしたもの/価値をメディアが整理する/グランジとローテクスニーカー

第3章 1995年のエアマックス―世界の何を変えたのか
「この新作は売れないかもしれない」/「エア マックス95」が生まれるまで/1995年に「エア マックス」は日本でどう受け止められたのか"/国民的ブーム"の真実「/スラム街」化したマーケット「/エア マックス狩り」/ナイキジャパンの勝算と誤算

第4章 インターネットとスニーカー―冬の時代の先に
魔の1998年/日本市場を狙ったアメリカ企業の失敗/ショップの苦境/冬の時代とストリート/藤原ヒロシと「ダンク」復刻/ハイテクの変容/モードとの融合/ハイブランドとスポーツメーカーの協業/インターネットはスニーカーに何をもたらしたのか

第5章 変容するスニーカー―ミレニアム以降に起きたこと
なぜ「ダンク」はストリートを支配できたのか/東京で起きた小売店の快進撃/神格化する藤原ヒロシと進むプレミアム化/ナイキ SB 誕生/ホワイトダンク展の意味/あらゆるものと結びついた「エア フォース 1」/幹を太くした「スーパースター」/ナイキとアップル/あふれる情報とその整理/ニューバランスのぶれなさ/ファストファッションの浸透がもたらしたもの「/ヴィンテージの進化」としてのコンバース アディクト/世界を席巻するニューバランス

最終章 スニーカーの今とこれから
「東京発」から「ヒップホップ発」へ/iPhone がもたらした情報革命と「エア ジョーダン」復活/ヘルシー志向の先で飛躍したニューバランス「/スタンスミス」から見たリブランディングの価値/2010年代前半の「エア マックス」/ベアフット(裸足)思想が到達した「編み」/変わらない藤原ヒロシの影響力/アーバンカルチャーとシュプリーム/ビッグ・コラボレーションの功罪/プレ値を更新しているのは誰か/ダッドシューズはなぜ人気を博したのか/ウィメンズの開花がもたらしたもの/アートとして/国際化が進む先で