鳥原学著『教養としての写真全史』(2021)

 

21世紀に入って、写真のもつ意味と役割は劇的に変わった。スマートフォンが普及し、誰もが気軽に写真を撮ってSNSにUPするようになったからだ。だがこれまでも、機材やメディアの変化とともに写真の役割は常に変化してきた。単なる記録の手段として始まった写真が、次第に報道・広告・表現などへとその役割を広げていき、やがて芸術の一ジャンルとして確固たる地位を築くまでの道筋をたどる。歴史を知り、写真を読み解くリテラシーを身につけるための一冊。

第1部 写真文化の基盤

 カメラと写真の歩み 描写の進化がもたらしたもの
 一九九〇年代以降の写真と社会
 ポートレイト 実態とイメージ
 スナップショット 日常から見出されたもの
第2部 ヴィジュアル・コミュニケーションとしての発達

 ヴィジュアル・コミュニケーションの誕生 一九二〇〜三〇年代の映像実験
 フォト・ジャーナリズムの展開 記録と宣伝
 広告写真 情報社会の視覚デザイン
第3部 写真表現の展開

 芸術と写真1 芸術家の写真、写真家の芸術
 芸術と写真2 前衛芸術としての写真
 芸術と写真3 美術館の時代と再帰的な表現
 ファッションと写真 文化と産業の境界
 身体と性のイメージ1 裸体の系譜
 身体と性のイメージ2 多様化する性をめぐって
 ネイチャー・フォト 写真史のもうひとつの起源
 建築写真と都市化の景観
 東アジア それぞれの写真史1 近代の葛藤とともに
 東アジア それぞれの写真史2 第二次世界大戦後の展開)
おわりに 文化的資源としての写真史

57 倉田精二FLASH UP Street PhotoRandom Tokyo1975~1979』

58 アウグスト・ザンダー『二十世紀の人々』

60 アレック・ソス『ナイアガラ』『スリーピング・バイ・ザ・ミシシッピー』

61 植田正治『SHOJI UEDA PHOTOGRAPHS―植田正治写真集』

72 ジャック=アンリ・ラルティーグ、ヴィヴィアン・マイヤー

74 アンリ・カルティエ・ブレッソン

75 ロベール・ドアノー

77 桑原甲子雄

79 (カルティエブレッソンの「決定的瞬間」完璧な構図と世界の調和に対抗して)「世界がこうあるべきという普遍的理想ではなく、「私にはこう見えている」という主観性の表現」ウィリアム・クラインロバート・フランクエド・ヴァン・デル・エルスケン

82 ゲイリー・ウィノグランド『女性は美しい』『Garry Winogrand Women Are Beautiful』

85 コンポラ写真 / アレブレ写真

コンポラ写真:戦後に生まれたベビーブーム世代の、内向的なメンタリティに根ざした素朴なスタイル。牛腸茂雄

アレブレ写真:アメリカのベトナム反戦闘争や日本の全共闘運動など、世界的な反体制運動に共鳴するように、現状の写真表現を否定する激しさを持ったスナップショット。中平卓馬高梨豊森山大道多木浩二岡田隆彦

88 荒木経惟『センチメンタルな旅』

91 ホンマタカシ『東京郊外 TOKYO SUBURBIA』

92 ヴォルフガング・ティルマンス『CONCORDE』ニック・ワプリントン『SAFETY IN NUMBERS』

Wolfgang Tillmans: Concorde

Wolfgang Tillmans: Concorde

  • Walther Konig Verlag
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篠山紀信中平卓馬『決闘写真論』(1977)

アンリ・カルティエ・ブレッソン『こころの眼―写真をめぐるエセー』

100 バウハウス、ヘルベルト・バイヤー、モホリ=ナギ

104 ロシア構成主義、エル・リシツキー、アレクサンドル・ロトチェンコ

114 『ライフ』ロバート・キャパ、マーガレット=バーク・ホワイト

121 マグナム・フォトス、ロバート・キャパアンリ・カルティエ・ブレッソンジョージ・ロジャー、デヴィッド・シーモア

122 フォトエッセイ、ウィリアム・ユージン・スミス

129 映像派、VIVO東松照明奈良原一高細江英公、丹野章、佐藤明、川田喜久治

138 セバスチャン・サルガド『サヘル』『エクソダス

キク・アダット『完璧なイメージ―映像メディアはいかに社会を変えるか』

ジョン・G.モリス『20世紀の瞬間―報道写真家‐時代の目撃者たち』

168 ライブ写真、映画、ウィリアム・クラクストン、デニス、デニス・ストック、ミルト・ヒントン、バート・スターン

169 マーカス・キーフ、デヴィッド・ボウイ他を担当

170 長谷部宏、鋤田正義、三浦憲治

204 マン・レイ、ウジェーヌ・アジェ、アルフレッド・スティーグリッツ 

208 日本の新興写真と前衛写真、淵上白陽、福原信三、堀野正雄、上田備山、安井仲治、小石清、花和銀吾、福森白洋、中山岩太、野島康三