小形道正「ファッションを語る方法と課題 ー消費・身体・メディアを越えて」『社会学評論』2013年, 63巻, 4号, p.487-502

本文

現在ファッションに関する研究は, 複雑かつ多岐にわたる一方で, それら諸研究を綜合的な視座から論じる視点は, ほとんど提示されてこなかった. そこで本稿は, まずこれまでのファッション研究の方法論的視線を明らかにしたうえで, 今後の社会学的課題について検討を行う.
本稿では, これまでのファッション研究が, <衣服と○○>という形式において3つの方法論的視線より論じられてきたことを明らかにする. この3つの方法論的視線とは, <衣服と消費>, <衣服と身体>, <衣服とメディア>という視点である.
まず<衣服と消費>では, 2つの側面からファッションにおける流行現象について論じられてきた. しかし, 結果としてこれらの研究は, ファッションの分類学的研究へと収斂する. 次に<衣服と身体>のファッション研究では, 根源的な身体を想定し, 衣服を対象化する現象学的研究が存在する一方で, 衣服の歴史性を論じながら, 形式化された身体を発見する研究が存在する. 最後に<衣服とメディア>に準拠する視線では, ファッションにまつわる雑誌の役割と読者の様態が描写される.
このように本稿では, まずファッション研究における3つの方法論的視線を明示する. そして, 今後のファッション研究における社会学的課題とは, 3つの方法論的視線を継承し, 綜合するだけではなく, <衣服と○○>という形式を越えて, 衣服それ自体の社会性とその変容を論じてゆくことであると提示する.

Finkelstein, J., 1996, After a Fashion, Victoria: Melbourne University Press.

(=1998, 成実弘至訳『ファッションの文化社会学せりか書房.)

栗田宣義, 2008, 「『ファッション系統』の計量社会学序説――東京都内10代女性ファッション誌読者層の分析」『武蔵大学総合研究所紀要』18: 127-57.

稗島武, 2005, 「レディメイドと身体――女性ファッション誌『アンアン』に見る身体イメージの変遷」『社会学評論』56 (1) : 200-13.