小田和正「K. マンハイムの関係主義理論における客観性とreflexivity」『現代社会学理論研究』2018年, 12巻, p.77-89

本文

本稿は、K. マンハイムが提示する客観性概念と関係主義(Relationismus)の理論を再検討し、それらの現代的意義を示そうと企図するものである。その方法として本稿は、M.ウェーバーの客観性概念とマンハイムの議論とを対比的に論じている。ウェーバーが客観性の基盤として「普遍的文化価値」、普遍妥当な「思考の規範」、「共有された経験的知識」という三つの要素を想定するのに対し、マンハイムは認識の社会性とパースペクティヴ性を提起し、「知識の存在拘束性」の主張を徹底化することで、そうしたウェーバーの諸想定を退けていた。その代わりにマンハイムは、ある特定の意味が特定の意味体系との関係において成立するという関係主義の立場から、二つの水準の客観性概念を提示している。本稿は、そのようなマンハイムの客観性概念と関係主義の理論が、民主的討議・公共的な相互批判の可能性を担保しようと意図されたものであることを示し、さらに、三つのreflexivity概念を用いることによって関係主義の理論がもつ意義を定式化した。