大屋雄裕「自由と幸福の現在 ーナッジとその先にあるもの」『現代社会学理論研究』2018年, 12巻, p.4-13

本文

近代の法制度において前提されている自由と幸福の関係が現在さらされている緊張について、ローレンス・レッシグによるアーキテクチャの権力と、キャス・サンスティーンのリバタリアンパターナリズムの差異を踏まえつつ検討し、特に後者が個人の自己決定に関する干渉を内包していること、それを正当化する要因として想定されているメタレベルでの自己決定が十分な根拠となっているかに疑義があること、サンスティーン自身が立脚しているとされる共和主義的自由の概念と抵触する可能性があることを指摘する。そのうえで、自然による制約を自由に対する脅威から除外する観点が、人工知能を通じた干渉が想定し得る現代において持ち得る問題性を指摘し、人格なき法制度を可能とする法制度の一例としてリバタリアンによる損害賠償一元化論を紹介する。

筏津安恕,2002,『私法理論のパラダイム転換と契約理論の再編― ヴォルフ・カント・サヴィニー』昭和堂.

Sunstein, Cass R., 1993, The Partial Constitution, Cambridge, Mass.: Harvard University Press. ― , 2015, Choosing Not to Choose: Understanding the Value of Choice, Oxford and New York: Oxford University Press.(=2017,伊達尚美訳『選択しないという選択― ビッグデータで変わる「自由」のかたち』勁草書房.)