米田誠司「日常と非日常のはざまで ―由布院温泉にみる震災対応と復興―」『西日本社会学会年報』2018年, 16巻, p.35-42

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人はなぜ旅をするのか。この問いから始まる観光について、日常は非日常と背理的あるいは相対的に概念づけられるものの、地域ごとに異なる日常があり、観光客、観光地に暮らす人々にも日常と非日常があることをまず指摘した。その上で、観光地で災害が発生した場合にどのようなことが起きるのかについて、2016年4月に発生した熊本地震からの復旧と復興について、由布院温泉で検証した。その結果、地震発生により日常と非日常のはざまは一瞬で消失し、住民も観光客も等しく被災者となる中、復旧、復興の活動が行われた。復旧では人材や資材の不足により不便な生活や営業を強いられながら復旧工事を待った一方で、同年7月から実施されたふっこう割施策の効果は大きく、2016年7月から9月の第1期でほぼ例年並みに戻ることができた。詳細には、宿泊業の客数がこの期間まず回復し、その後他業種も客数が回復していった。またマスコミの過剰報道による風評被害が指摘される一方で、九州各地から支援に足を運ぶことが評価されていた。最後に、観光地を抱える地域の防災計画策定では、定住人口だけでなく非定常人口も考慮に入れた防災計画策定を検討すべきであろう。