谷本奈穂「美容整形というコミュニケーション:外見に関わり合う女性同士」『フォーラム現代社会学』2017年, 16巻, p.3-14

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美容整形は「劣等感」や「他者に対するアピール」のために行われると信じられてきたが、むしろ実践者たちは「自己満足」を最も重視する。ただし同時に、「他者」による外見の評価を気にしてもいた。先行研究では、この他者を「異性」や、より一般的な「社会」(一般化された他者)と措定し、日常生活において「具体的に誰なのか」は見落としてきた。そこで、本論は、美容整形希望者・実践者が外見について準拠する「具体的な他者」を明らかにすることを試みる。

なお、先行研究では実践者の「動機」に注目されがちだったが、本稿では実践者たちの「コミュニケーション」のレベルに注目した分析を行う。さらに先行研究の調査は、美容整形経験者だけを対象としたものが主だが、本論では実践者へのインタビューを行いつつも、希望者/非希望者や、あるいは経験者/非経験者の比較分析も行う。実際に「美容整形経験と何が結びつくか」は、両者の比較をしてこそ見出しうるからだ。

さて分析から明らかになったのは、希望者・実践者が重視する他者とは、第一に「同性友人」であり、次いで「母」や「姉妹」であることだ。美容整形にコミットするのは男性より女性が多いことを踏まえるなら、「女性同士のネットワーク」が重要であるともいえる。女性にとって、異性や社会(一般化された他者)ではなく、「身近にいる同性」とのコミュニケーションの中に、外見を変える「地平」が成立しているのである。

谷本奈穂,2008,『美容整形と化粧の社会学 ― プラスティックな身体』新曜社.

美容整形と化粧の社会学 新装版-プラスティックな身体

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  • 作者:谷本奈穂
  • 発売日: 2019/09/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

谷本奈穂,2013b,「ミドルエイジ女性向け雑誌における身体の老化イメージ」『マス・コミュニケーション研究』83: 5–29.【本文