齋藤圭介「男性学の生殖論における臨界―再生産責任の帰責主体をめぐる議論を中心に―」『ソシオロゴス』2009年, 33号

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本稿は男性学の立場から生殖論を構築するための基礎的視座を提供することを目指す。リベラル・フェミニズムによる生殖論の多くは、生殖を女性の問題として語ってきた。そのため生殖 に関わるアクターは女性一人と考えられ、男性について多くは語られてこなかった。その一方で、これら男性不在の生殖論に対して、リベラル・フェミニズムの問題構成を引き継ぐかたちで積極的に生殖を男性の問題として捉え直そうという男性学の試みがある。彼らのこの試みは、従来の家父長制的な男性 像とは異なる、生殖論における男性主体の構築を目指した。しかし、これらの男性学からの生殖論構築の試みは、論理内在的に不可避にジレンマを抱えている。本稿はこの男性学の生殖論を批判的に検討することを通して、男性学が生殖を語るときに立脚しうる基礎的視座を明らかにする。