【本文】
本稿では, 女性誌に載せられた恋愛ハウトゥから純粋な関係性を志向する自己知を探索し, さらに分類・整序することによって如何なる助言をめぐる言説から成り立っているのかを明らかにした. 女性誌の恋愛ハウトゥ記事の中でも, (a)「(あなたは) ~のために~の状態・行動パターンに陷っていないか」「~の思考状態になると恋は上手くいかない」, (b)「恋愛関係を築いていくには~の思考の仕方・行動のあり方が必要である」といった自己発見・自己変革を促す助言が載せられた記事を分析資料としている.
分析の結果, 女性誌の恋愛ハウトゥには(a)「自己否定意識・拒否される恐怖感が強いために, コミットする積極性を失っている状態になっていませんか」「独占欲・嫉妬心・依存心の強さからオーバー・コミットメントを行っている状態になっていませんか」「自己欲求 (自分の気持ち) を抑圧し, 相手の欲求を満たすことに没頭する状態になっていませんか」「自己欲求 (自分の気持ち) を満たすことのみを優先し, 相手の欲求に無関心・無配慮な状態になっていませんか」などの言説が存在していた.
一方, (b)「恋愛関係を築いていくには~の思考の仕方・行動のあり方が必要である」という自己変革を促す言説は, 多くの相反する様相を呈する助言で氾濫するようになっていた.
谷本奈穂, 2008, 『恋愛の社会学――「遊び」とロマンティック・ラブの変容』青弓社
牧野智和, 2015, 『日常に侵入する自己啓発――生き方・手帳術・片づけ』勁草書房. 既読