リチャード・パワーズ著, 柴田元幸, 前山佳朱彦訳『囚人のジレンマ』(1988=2007)

 

囚人のジレンマ

囚人のジレンマ

 

ホブソン家の家族たちは、いま大きな困難に向き合っていた。家長である元・歴史教師のエディ・ホブソンが抱え込んできた謎の病気が、いよいよ彼の生命を脅かす深刻な様相を帯びつつあったからだ。
いつも奇妙な《なぞなぞ》を家族皆に問いかけつつ、誰も立ち入ることの出来ぬ自分だけの「ホブズタウン」なる世界に浸り続けている父エディ。その秘密を解き明かそうと試みるうち、子どもたちは思いもよらぬ探求の道、すなわち第二次世界大戦下のアメリカ史の《影》の部分へと踏み込んでいく……
そこで浮かび上がるのは、想像の二十世紀を行き急ぐ男、ウォルト・ディズニーその人だ。『ファンタジア』で驚くべき成功を収めながら、戦意高揚映画『きみが戦争だ』の製作に突き進むディズニー。彼とエディ少年が交錯する歴史の一瞬に生じた真実とは?

『舞踏会へ向かう三人の農夫』で話題をさらった天性の語り部パワーズが挑む「現代史と家族」のパラドクス。深い感動を呼び起こす長篇小説である。