ウェンディ・ブラウン著, 中井亜佐子訳『いかにして民主主義は失われていくのか-新自由主義の見えざる攻撃』(2015=2017)

 

いまや新自由主義は、民主主義を内側から破壊している。新自由主義は政治と市場の区別を取り払っただけでなく、あらゆる人間活動を経済の言葉に置き換えた。主体は人的資本に、交換は競争に、公共は格付けに。だが、そこで目指されているのは経済合理性ではない。新自由主義は、経済の見かけをもちながら、統治理性として機能しているのだ。その矛盾がもっとも顕著に現れるのが大学教育である。学生を人的資本とし、知識を市場価値で評価し、格付けに駆り立てられるとき、大学は階級流動の場であることをやめるだろう。民主主義は黙っていても維持できるものではない。民主主義を支える理念、民主主義を保障する制度、民主主義を育む文化はいかにして失われていくのか。新自由主義が民主主義の言葉をつくりかえることによって、民主主義そのものを解体していく過程を明らかにする。

序 デモスの崩壊
〈第一部 新自由主義的理性と政治的生〉
第一章 民主主義の崩壊  新自由主義が国家と主体をつくりなおす
第二章 フーコーの『生政治の誕生』  新自由主義の政治的合理性の見取り図
第三章 フーコー再訪  ホモ・ポリティクスとホモ・エコノミクス
〈第二部 新自由主義的理性を散種する〉
第四章 政治的合理性とガバナンス
第五章 法と法的理性
第六章 人的資本を教育する
終章 剥き出しの民主主義が失われ、自由が犠牲へと反転する

訳者あとがき
原注
索引