吉原祥子著『人口減少時代の土地問題ー「所有者不明化と相続、空き家、制度のゆくえ』(2017)

持ち主の居所や生死が判明しない土地の「所有者不明化」。この問題が農村から都市に広がっている。空き家、耕作放棄地問題の本質であり、人口増前提だった日本の土地制度の矛盾の露呈だ。過疎化、面倒な手続き、地価の下落による相続放棄、国・自治体の受け取り拒否などで急増している。本書はその実情から、相続・登記など問題の根源、行政の解決断念の実態までを描く。

第1章 「誰の土地かわからない」―なぜいま土地問題なのか
 空き家問題の根源―森林・農村から都市へ
 なぜ管理を、権利を放置するのか
 法の死角―あいまいな管轄、面倒な手続き
 下落する土地の価値―少子・高齢化、相続の増加
第2章 日本全土への拡大―全国888自治体の調査は何を語るか
 死亡者課税による“回避”―災害とは無関係の現実
 相続未登記、相続放棄の増加―土地に対する意識の変化
 行政の解決断念―費用対効果が見込めない
第3章 なぜ「所有者不明化」が起きるのか
 地籍調査、不動産登記制度の限界
 強い所有権と「土地神話」の呪縛―人口増時代の“遺物”
 先進諸外国から遅れた現実―仏、独、韓国、台湾との比較
第4章 解決の糸口はあるのか―人口減少時代の土地のあり方
 相続時の拡大を防げるか―難しい法改正と義務化
 土地の希望者を探せるか―管理・権利の放置対策
 「過少利用」の見直しを―新しい土地継承のあり方