- 作者: 佐藤幸治
- 出版社/メーカー: 左右社
- 発売日: 2015/04/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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はじめに
第一章 現代の「憲法」(「立憲主義」)についての典型的な理解
第二章 「憲法」の意義・種別・分析的構造
第三章 「憲法」(「立憲主義」)の成立過程
第四章 アメリカ憲法の歴史的寄与 ・第五章 フランス革命の衝撃と成文憲法の普遍化
第六章現代の「憲法」(「立憲主義」)への展開とその課題
おわりに
111「では、憲法典制定後は、1789年の権利宣言はどのような位置づけになるのであろうか。この点につき、樋口陽一氏は、この規定の反面の効果として、権利宣言の方は「立法権を―まして憲法そのものを―法的には拘束しなくなった、と見るべきであろう」とされる。すなわち、憲法典の成立以前においてこそ、万能とされている「憲法制定権力」を法的に拘束しようとするために権利宣言が固有の意味をもつ。しかし、成立の時点以降は、一方で「憲法制定権力」は凍結され、成立し終わった憲法の正当性原理となるとともに、改めてそれを法的に拘束することは不必要になる。他方では、かつて「憲法制定権力」の中に一括されていた憲法改正権がpouvoirs constitueの一つとして枠づけられた限りにおいては、それを法的に拘束するためには、超憲法的規範としての権利宣言に頼ることなく、所与の憲法の内部における憲法改正作用への法的拘束の問題として処理できるようになった、と」
135 栗城「国民の憲法制定権力が行使される場合といえども、国民の権力という一つの権力の一回限りの決断として行われるのではなく、種々の利害調整の過程を踏まえて行われる」という政治的現実を考慮に入れれば、「18世紀、19世紀にはともかく、―ワイマール憲法の成立の場合が示しているように―20世紀及び21世紀には、国民の憲法制定権力理論をベースにしつつ、なんらかの形で憲法契約理論をとりこむ事が適切なことであるように思われる」
135「そしてこの示唆に関係して思い浮かぶのは、既にみたように、権力の所在と法の権威源泉とを区別し、一旦決めて相互に約束し合った憲法は基本的に後々を拘束するというアメリカの憲法理論・実践である」