石原千秋, 小森陽一著『漱石激読』(2017)

漱石生誕150年。こんな読み方があったのか! 漱石研究をリードしてきた名コンビが読めば、漱石文学の読みの可能性はまだまだ泉のように湧いてくる。
まえがき(小森陽一

序章 『文学論』から見わたす漱石文学
Ⅰ 『吾輩は猫である』『坊っちゃん』『草枕』を激読する
第一章 『吾輩は猫である』――深読みが止まらない
第二章 『坊っちゃん』――一気書き、一気読み
第三章 『草枕』――降りられない近代を生きぬく
Ⅱ 『虞美人草』『坑夫』『夢十夜』を激読する
第四章 『虞美人草』――読めば読むほど、恐い
第五章 『坑夫』――だから藤尾は美禰子になれた
第六章 『夢十夜』――漱石文学を解く索引のよう
Ⅲ 前期三部作を激読する
第七章 『三四郎』――「ダブル」の魅惑
第八章 『それから』――無意識は隠せない
第九章 『門』――これでは悟れるわけがない
Ⅳ 後期三部作を激読する
第十章 『彼岸過迄』――心の探偵小説
第十一章 『行人』――女も男を読んでいる
第十二章 『こころ』――やっぱり、日本近代文学の頂点
Ⅴ 『道草』『明暗』を激読する
第十三章 『道草』――愛に満ちている
第十四章 『明暗』――その愛はどこへ
小森さんの大きなマスク――「あとがき」にかえて(石原千秋

43 石原「たとえば『舞姫』を読むと、ベルリンのウンテル・デン・リンデン(ベルリンの大通り)がまっすぐに伸びている。あれはヨーロッパでプロイセンが遅れて台頭した近代国家で、急ごしらえの権力の象徴でしょう。その先に迷宮のようなクロステル巷(こうじ)があって、直線と迷宮との対比であの小説は成り立っている。権力とそうでないものの対比が、もう冒頭に出ている。直線と権力はまさに結びついているんです。権力は直線が好きです」
213 大橋『T・イーグルトン『文学とは何か』を読む』

273 蓮實『魅せられて 作家論集』
魅せられて──作家論集

魅せられて──作家論集