佐藤俊樹著『不平等社会日本―さよなら総中流』(2000)

不平等社会日本―さよなら総中流 (中公新書)

不平等社会日本―さよなら総中流 (中公新書)

実績主義や自由競争の市場社会への転換が声高に叫ばれている。だがその「実績」は本当に本人の力によるものか。筆者は社会調査の解析から、専門職や企業の管理職につく知識エリートたちの階層相続が戦前以上に強まっていることを指摘。この「階級社会」化こそが企業や学校の現場から責任感を失わせ、無力感を生んだ現在の閉塞のゆえんとする。一億総中流の果てに日本が至った「階級社会」の実態を明かし、真の機会平等への途を示す。

序章 『お嬢さま』を探せ!
第1章 平等のなかの疑惑―実績VS努力
第2章 知識エリートは再生産される―階層社会の実態
第3章 選抜社会の空洞化―粘土の足の巨人
第4章 「総中流」の落日―自壊するシステム
第5章 機会の平等社会への途―効率と公平
終章 やや長いあとがき

85「この(1)W雇上の再生産の潜在化、(2)ホワイトカラー/ブルーカラー境界の横断、(3)ブルーカラー雇用から自営への上昇ルートは、まさに戦後の階層社会、いわば「階層の戦後」を特徴づけるものである。私はこれを「戦後的階層―移動パターン」とよんでいる。戦後の開かれた社会、「努力すればナントカなる」社会は、この戦後的階層―移動パターンこそが戦後の開かれた社会、「努力すればナントカなる」社会なのだといった方がいい」