蟻川恒正著『憲法的思惟−アメリカ憲法における「自然」と「知識」』(1994)

国旗への忠誠が最も求められる戦時に,敬礼拒否を個人の精神的自由の名の下に認め,近代立憲主義の確立を宣言した記念碑的判決として米憲法史上名高いバーネット判決.ロバート・ジャクソン判事の思考に即して,近代立憲主義が法典をはじめとする諸制度の内に定着する以前の,純粋に思考それ自体の姿において析出し,吟味する理論研究の名著の再刊.

序章 余剰について
第1部
 第1章 判決の不在
 第2章 差異と非区別
第2部
 第3章 知識人の位層
 第4章 法=歴史の審判
終章 仮構あるいは逆接続

18 一般的説明「Barnette判決において連邦最高裁は、宗教上の理由からする国旗敬礼拒否の主張を容れ、「エホヴァの証人」に対し、当該国旗敬礼からの免除(exemption)を認めた」しかし「Barnette判決は、exemptionという定式を採用してはいないのである」
100「それどころか、「アメリカ市民が言明すべき何ものを持たぬとしたら、彼らに言論の自由を与えて何ほどの価値があるのか」と自問するミクルジョンは、言論の自由への需要を、教育への需要の消極的形態と断じ、前者に対し、後者を「はるかに深く、重要である」と云う」