アンヌ・ヴァンサン・ビュフォー著『涙の歴史』(1986=1994)

涙の歴史

涙の歴史

流転する涙のレトリックとそのコミュニケーションの論理を活写。こころとからだの間が語る近代性の深淵。ミシュレコルバンに続く感性の歴史学の話題作。

第1部 涙への嗜好、感情の交換
 読書で流す涙
 涙の交換とその規則
 感動の良い慣用
 劇場での涙
 大革命下に涙を流す〈一七八九‐一七九四年〉
第2部 恥らいから乾きまで
 新しい感受性のために
 苦しみのひそやかな魅力
 風俗研究
第3部 嗚咽の発作、感情の危機
 感情の病
 不安をそそる異常さ
 大衆小説に見る涙
 感動の社会的・政治的規範
 メロドラムの不運

405 訳者「限定された人間が集うサロンでは言うに及ばず、お涙頂戴劇が切望された劇場や、革命の日々の公共の場ではいともやすやすと見知らぬ人々の間で熱い涙が流された18世紀から、数度の市民革命を経て社会の主導権を握ったブルジョワジーにあっては、自己抑制、羞恥心、無感動を社会生活の規範とする男性のあらわな心情吐露が嫌悪され、涙はもっぱら女性や子ども、庶民階層のものとなった19世紀後半までの変遷が明らかにされる」