大塚英志著『感情化する社会』(2016)

感情化する社会

感情化する社会

天皇」も「文豪」も「お気持ち」化する・天皇「お気持ち」、スクールカースト、多崎つくる、腐女子AIりんな、LINE文学…。私たちはあらゆるものを「感情」として表出し、「感情」として消費して生きている。余りに感情的すぎる日本の現在を不愉快に「批評」する試み。「感情化」とはあらゆる人々の自己表出が「感情」という形で外化することを互いに欲求しあう関係のことを意味する。理性や合理でなく、感情の交換が社会を動かす唯一のエンジンとなり、何よりも人は「感情」以外のコミュニケーションを忌避する。(略)その結果、私たちは「感情」に対して理性的でありえることばを政治からジャーナリズム、文学にいたるまでことごとく葬っている。私たちは私たちに心地良い感情を提供することばしか、政治にもジャーナリズムにも文学にも求めず、その要求にそれらはいとも簡単に屈した。だからぼくは本書で敢えて不快なことばを連ねる。(「第一章 感情天皇制論」より)

一部 感情化する社会
 第一章 感情天皇制論
  「お気持ち」によって直結する天皇と国民
  感情天皇制の起源としての玉音放送
  象徴天皇制の本質は感情労働である
  「猿としての日本」の再帰
  公共性に向かわない「感情」
  「感情」の外に立つ「批評」
 第二章 物語労働論 web上の「新しい労働問題」をめぐって
  ポストフォーディズム下の労働問題
  プラットフォームとフリーレイバー
  強制される感情の発露
第二部 感情化する文学
 第三章 スクールカースト文学論
  水平革命の揺り戻しとしての「スクールカースト
  『セヴンティーン』はスクールカースト文学である
  ライトノベルはプラットフォームを懐疑できない
  「敗者の文学」の死
 第四章 LINEは文学を変えたか
  LINEが可視化する「文学」
  中上健次が生きた小説の終わり
  作者というアイコン
  「私語り」するAI
  「りんな」は太宰治である
 第五章 文学の口承化と見えない言文一致運動
  口承文芸化するweb文学
  Google人工知能の詩
  柳田國男のオーディエンス論
  webは言文一致を社会化できるか
 第六章 機能性文学
  エコシステムのなかの「文学」
  作家は行動しない
  「火花」はこの国の外側では発光している
 第七章 教養小説と成長の不在
  教養小説を忌避した日本
  多崎つくるとヴィルヘルム・マイスターの遍歴
  国民的精神のビルドゥング
  歴史修正主義者と自己啓発
 第八章 AI文学論
  「物語るAI」の可能性
  「小説ってこんな感じ?」
  AIがもたらす「編集者の死」
あとがき 歴史のシンギュラリティーに向けて

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南回帰船

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