大澤真幸著『自由の条件』(2008)

<自由>の条件

<自由>の条件

他者がいなければ<自由>なのか?他者がいればこそ<自由>ではないのか? 毎日出版文化賞受賞『ナショナリズムの由来』に続く大澤社会学の集大成。堂々の1000枚!肥大化する「選択の自由」と「自己責任」。自由でありすぎることの息苦しさが意味するものは? もはや自明ではない「<自由>の条件」を問い直す、必読の書!

I 自由と時間

1 開封前に舌打ちするひと
  自由と因果関係の間のアンチノミー
  スピノザとマルブランシュ
  開封前の舌打ちするひと
  因果関係の規定としての自由

2 祈りの時間性
  過去を借定する
  矛盾としての時間

3 二つの名前
  選択の神秘
  フレデリックとアルマン
  待つり

4 触るとき
  発生の儀礼
  水と女の触覚体験
  衣
  神の顔
  時間の発生と「第三者の審級

5 男と女
  数学的/力学的アンチノミー
  女の定義
  男の定義
  四種類の他有

Ⅱ 現代社会における自由の困難

6 消極的自由
  バーリンの「消極的自由」の擁護
  「消極的自由」概念への諸疑問
  「積極的自由」へ

7 積極的契機の追補
  小括
  名前の効果
  消極的自由への積極的な契機の追補

8 蓋然性について
  個人主義自由主義批判――ハイエクを媒介に
  偶然的かつ必然的な行為
  蓋然性の直知――ケインズを媒介に

9 江夏の「この一球」と予期の階級的構成
  江夏の「この一球」を待つこと
  予期の階級的構成

10 資本の原理
  異人殺しの伝説
  資本の原理
  階級分化の必然性

11 不確実性を裏打ちする確実性
  (機会主義的な)予期の自己破綻
  プロテスタンティズムの予定説
  「有効需要の原理」と「友/敵理論」
  確実性と不確実性

12 そして知っている者はどこにもいなくなった
  キリスト教信仰の両義性――法則と奇跡
  第三者の審級の不在
  第三者の審級を消耗する機制
  リスク社会

13 リベラリズムの不可避の変質
  リスク社会における「自由な選択」の空虚
  リベラリズムアメリカ社会
  リベラリズムの変質とコミュニタリアンの登場

14 回帰する超越性
  多文化主義エスニック・ナショナリズム
  オウム真理教を素材にして
  第三者の審級の逆説的回帰
  キリスト教における奇跡、「主人と奴隷」

Ⅲ 記憶の困難

15 私は伝送された?
  現代社会における責任概念の失効
  私の伝送をめぐる思考実験
  人格の同一性の条件

16 分身
  人格の同一性と名前の同一性
  名前の識別機能
  〈同一性〉と根源的遇有性

17 スキゾは本当にやってきた
  スキゾの現実化としての多重人格
  資本主義とヒステリー
  現代社会における多重人格

18 記憶の困難
  五〇年代と八〇年代のフィルム・ノワール
  歴史的語りの構造
  記憶の困難の原因

19 死の欲動
  展開された価値形態と一般的な等価形態
  死の欲動
  第三者の審級による存在の許可

Ⅳ もうひとつの“自由”

20 キリストの贖罪
  本源的偶有性と形而上の罪
  キリストの贖罪び自己言及的性格
  キリストの受難=われわれの贖罪

21 “自由”のもうひとつの可能性へ
  自由の繁栄による敗北
  自由そのものを命令する第三者の審級
  キリストの犠牲の意味と「隣人愛」

22 不確定性の効用
  法を否定する権利としての人権
  究極の価値を託された対象の不確定性
  第三者の〈他者〉への還元

23 マゾヒズム的転回
  レイプの悪
  死者のまなざし
  未来の〈他者〉

24 〈公共性〉に向けて
  普遍的公共性の不可避性
  「この〈私〉ではないかもしれない〈私〉」
  根源的偶有性に基づく〈公共性〉

補遺 自由意志と因果関係
   サイボーグ化した身体と哲学的問い
   量子力学は自由意志を救出するか?
   先験的過去
   ストローソンの「責任」概念

26

真理という謎

真理という謎

29 マクタガートの時間論
時間は実在するか (講談社現代新書)

時間は実在するか (講談社現代新書)

227
アメリカとは何か (平凡社ライブラリー (89))

アメリカとは何か (平凡社ライブラリー (89))

323
記憶を書きかえる―多重人格と心のメカニズム

記憶を書きかえる―多重人格と心のメカニズム

439
自由は進化する

自由は進化する

440 ストローソンの責任論
責任と自由 (双書エニグマ)

責任と自由 (双書エニグマ)