松尾匡著『自由のジレンマを解くーグローバル時代に守るべき価値とは何か』(2016)

人間関係が固定的で、個人の責任とは集団の中で与えられた役割を果たすこととみなされる「武士道型」の社会から、グローバル化によって人間関係が流動的な「商人道」型の社会に移行している現代においては、個人の責任は自らの自由な選択に対して課されるようになる。このような時代にフィットすると思われる思想はリバタリアン自由至上主義であるが、リバタリアンは福祉政策にも景気対策にも公金を使わないことを主張することが多い。これらの政策はいかにして正当化されるのか。また、様々な文化的背景を持つ個々人の「自由」の対立は解決できるのか。かつてマルクスは、文化の相違をもたらす、人間のさまざまな「考え方」による抑圧を批判し、単純労働者による団結・調整により自由は現出すると考えたが、労働の異質化が進んだ現代ではその展望は実現しない。しかし、アマルティア・センの提案が大きなヒントになる――。俊英の理論経済学者が、現代の新たな自由論を構築する。

第1章 責任のとり方が変わった日本社会
第2章 「武士道」の限界
第3章 リベラル派vs.コミュニタリアン
第4章 リバタリアンハイエクを越えよ
第5章 自由と理性
第6章 マルクスによる自由論の「美しい」解決
第7章 「獲得による普遍化」という解決―センのアプローチをどう読むか
第8章 疎外のない社会への展望

ポスト・リベラリズムの対抗軸

ポスト・リベラリズムの対抗軸

159「事前的ルールを選ぶ自由」
229「私の師匠の置塩信雄を思い出して」
247
「思想」としての大塚史学―戦後啓蒙と日本現代史

「思想」としての大塚史学―戦後啓蒙と日本現代史