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日本国内で推進されている自殺対策において普及がはかられている、うつ病にかんする精神医学的知識は、しばしば〈自死遺族への責任帰属を強化・明確化する〉と批判されている。しかし自死遺族松ヶ崎さんは、当該知識を自らの方法として用い、義母の自殺動機として〈うつ病〉を付与し、義母を自殺したうつ病患者としてカテゴリー化し、自らをうつ病患者に必要なケア――述部としての――を遂行した者として語った。他方でこの動機付与・カテゴリー化実践と、夫の義母にたいする精神医学的に不適切な対応に言及しつつ、義母自身の性格にかんする語りを接合することで、彼女は義母の自殺にかかわる責任の帰属を斥け、かつ夫への責任帰属も同時に回避していた。本稿は、松ヶ崎さんの一連の活動を記述・検討することをつうじて、自殺動機付与・責任帰属活動において精神医学的知識が既存の人びとの方法と並んでいかように用いられうるのかについて、概観を提示する。
貞包英之「浄化された死,あるいは情報の海」
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