加藤典洋著『村上春樹は、むずかしい』(2015)

はたして村上文学は、大衆的な人気に支えらえられる文学にとどまるものなのか。文学的達成があるとすれば、その真価とはなにか――。「わかりにくい」村上春樹、「むずかしい」村上春樹、誰にも理解されていない村上春樹の文学像について、全作品を詳細に読み解いてきた著者ならではの視座から、その核心を提示する。

はじめに 野球帽をかぶった文学?
第1部 否定性のゆくえ 1979年―87年
 I 否定性と悲哀―『風の歌を聴け』の画期性
1 肯定性の肯定―「気分が良くて何が悪い?」
   2 「新しい天使」と風の歌
 II 戦う小説家―初期
3 中国へのまなざし―「中国行きのスロウ・ボート
   4 貧しい人々と小さな隣人―「貧乏な叔母さんの話」 
   5 「内ゲバ」の死者への関心―「ニューヨーク炭鉱の悲劇」
 III 個の世界―前期
6 ポストモダン社会と抵抗―「パン屋襲撃」と「パン屋再襲撃
   7 否定性から内閉性へ―『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』と「ファミリー・アフェア
第2部 磁石のきかない世界で 1987年―99年
 IV 対の世界―中期
8 恋愛小説の誕生―『ノルウェイの森
   9 『ねじまき鳥クロニクル』の歴史記
  V 時代とのせめぎあい―転換期
  10 1995年の態度変更―「めくらやなぎと、眠る女」
   11 村上春樹武装解除される―『アンダーグラウンド
第3部 闇の奥へ 1999年―2010年
 VI 父と子の基軸―後期
12 もっと小さく、もっと遠く。―『スプートニクの恋人』と『神の子どもたちはみな踊る
  13 換喩と異界と「全体的な喩」―『海辺のカフカ』と『アフターダーク
14 まだ書き終えられていないこと―『1Q84
終わりに 「大きな主題」と「小さな主題」―3・11以後の展開
あとがき