創られた「日本の心」神話 「演歌」をめぐる戦後大衆音楽史 (光文社新書)
- 作者: 輪島裕介
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2010/10/15
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美空ひばりは、「演歌」歌手だったのか?気鋭の音楽学者が、膨大な資料と具体例をもとに「演歌」=「日本の心」神話成立の謎を解き明かす。"伝統"はいかに創られるのか?「演歌は日本の心」と聞いて、疑問に思う人は少ないだろう。落語や歌舞伎同様、近代化以前から受け継がれてきたものと認識されているかもしれない。ところが、それがたかだか四〇年程度の歴史しかない、ごく新しいものだとしたら?
本書では、明治の自由民権運動の中で現れ、昭和初期に衰退した「演歌」----当時は「歌による演説」を意味していた----が、一九六〇年後半に別な文脈で復興し、やがて「真正な日本の文化」とみなされるようになった過程と意味を、膨大な資料と具体例によって論じる。いったい誰が、どういう目的で、「演歌」を創ったのか?
はじめに―美空ひばりは「演歌」歌手なのか?
第1部 レコード歌謡の歴史と明治・大正期の「演歌」
近代日本大衆音楽史を三つに分ける
明治・大正期の「演歌」 ほか
第2部 「演歌」には、様々な要素が流れ込んでいる
「演歌」イコール「日本調」ではない
昭和三〇年代の「流し」と「艶歌」 ほか
第3部 「演歌」の誕生
対抗文化としてのレコード歌謡
五木寛之による「艶歌」の観念化 ほか
第4部 「演歌」から「昭和歌謡」へ
一九七〇年代以降の「演歌」
「演歌」から「昭和歌謡」へ ほか
80 船村徹・高野公男
87「低音ージャズ(洋楽)調ー都会的」「高音ー民謡調ー地方的」
290「昭和30年代までの「進歩派」的な思想の枠組みでは否定され克服されるべきもであった「アウトロー」や「貧しさ」「不幸」にこそ、日本の庶民的・民衆的な真正性があるという1960年代安保以降の反体制思想を背景に、寺山修司や五木寛之のような文化人が、過去に商品として生産されたレコード歌謡に「流し」や「夜の蝶」といったアウトローとの連続性を見出し、そこに「下層」や「怨念」、あるいは「漂白」や「疎外」といった意味を付与することで、現在「演歌」と呼ばれている音楽ジャンルが誕生し、「抑圧された日本の庶民の怨念」の反映という意味において「日本の心」となりえたのです」
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