末延芳晴著『原節子、号泣す』(2014)

原節子、号泣す (集英社新書)

原節子、号泣す (集英社新書)

代表作『東京物語』が、英国映画協会発行の映画雑誌「Sight & Sound」による二〇一三年アンケートで世界の映画監督が選出したナンバー1映画になるなど、小津安二郎は今なお注目を集めている映画監督である。その小津作品の中でも頂点と評されるのが紀子三部作、『晩春』『麦秋』『東京物語』だ。各作品のフィナーレに近い場面で、ヒロインを演じた女優原節子は全身を震わせて泣き崩れる。
 小津が、不滅の名を残し得たのは、この三本の映画のフィナーレで原に号泣させたからだといっても過言ではない。「泣く」という行為を切り口に、幸福の限界、幸福の共同体の喪失、という小津映画の主題と思想的本質に迫る画期的評論。

第1章 ほとんどの小津映画で女優たちは泣いた
第2章 小津映画固有の構造と主題
第3章 思想としての小津映画
第4章 原節子は映画のなかでいかに泣いたか
第5章 原節子をめぐる小津と黒澤明の壮絶な闘い
第6章 『晩春』(1)―原節子、初めての号泣
第7章 『晩春』(2)―娘は父親との性的結合を望んでいたか
第8章 『麦秋』―失われた幸福なる家族共同体
第9章 『東京物語』―失われた自然的時間共同体
第10章 喪服を着て涙も見せずスクリーンから消えていった原節子

上海陸戦隊
90 颱風圏の女, 大庭秀雄

永遠のマドンナ 原節子のすべて

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原節子 あるがままに生きて (朝日文庫)

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完本 小津安二郎の芸術 (朝日文庫)

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絢爛たる影絵 小津安二郎 (岩波現代文庫)

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小津安二郎の美学―映画のなかの日本 (現代教養文庫)

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小津安二郎の反映画 (岩波現代文庫)

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