ジェフリー・バッチェン著『写真のアルケオロジー』(1997=2010)メモ

写真のアルケオロジー (視覚文化叢書)

写真のアルケオロジー (視覚文化叢書)

写真の位相を捕捉するために、デリダ脱構築フーコーの考古学を駆使しながら、既存の写真論を腑分けする。写真の発明以前の言説にまでさかのぼって精査し、そこに孕まれた亀裂や矛盾から、写真というメディアに憑依する多様な欲望を浮き彫りにする。

序文
第1章 同一性
 複数の写真
 写真自体
 起源の物語
第2章 着想=懐胎
 最大の謎
 膨大なリスト
 原写真家たち
第3章 欲望
 自然のイメージ
 風景の眺め
 カメラ・オブスキュラによって形成されるイメージ
 自発的複製
 変異
第4章 さまざまな画像
 裸婦を描く素描家
 コリントスの娘
 風景(窓からの眺め)
 静物
 電磁石
 溺死者
第5章 方法
 写真と差延
 連続性/非連続性
 ポストモダニズムと写真
 現実的な非現実性
 表象/現実
 写真再考
墓碑銘
訳者あとがき
索引

23「写真にたいするこのような見方(ポストモダニズム)は、1960年代から70年代にかけて支配的だった美術史的方向性ーとくにモダニズム的フォーマリズムとして知られている批評スタイルーに直接的に反応したものである。ポストモダニズムは、フォーマリズムの方向性に断固として対抗し、それを、知的に不毛で、政治的に保守的なものと見なしている。写真に関していえば、このようなモダニズムの方向は、60年代後半から70年代初頭にかけて、主にアンドレ・バザンや、ジョン・シャーカフスキーなどのキュレーターたちによって広められていた。しかしアメリカでは、クレメント・グリーンバーグの並外れて強力な支持を通じて、フォーマリズムは芸術一般について語るひとつの方法としてすでに十分に確立されていたのである」
29「「写真以前」展は、ニューヨーク近代美術館という美術館が要求した主張、つまり、写真の歴史は本質的・存在論的に、芸術によって生み出されただけではなく、実際、芸術から切り離せないという主張を、まさに提供するために、このように構築されたのである」
29 41(47)

写真の歴史

写真の歴史

39(32)
グリーンバーグ批評選集

グリーンバーグ批評選集

122「1800年ごろまでには、風景はもはや神によって直接定められるものではなく、ほかならぬ人間による構築物として認識されるようになった。さらにいえば、風景と自然との関係は、徹底して隔てられるようになっていた。ピクチャレスク(18世紀から19世紀初頭にかけてのヨーロッパでの風景の主要な理論であり、風景イメージを作り出し、判断するための広く知られた一連の慣習と美的規範)な風景は、明らかに自然界から形づくられるうる多くの知の秩序のひとつにすぎないものになる」
126「18世紀後期までには、鏡はもはや無媒介の現実を保証するものとみなされてはいなかったようである。むしろ、それは対立物の力学的な折り重なり、つまり自然/文化、現実/理想、普遍/特殊、科学/芸術、対象/主体、反映/表出といった概念的対立項を綜合することなしに、組み合わせつづける動的状態を示す隠喩として見なされるようになった」
128 164
視覚論 (平凡社ライブラリー)

視覚論 (平凡社ライブラリー)

観察者の系譜―視覚空間の変容とモダニティ (以文叢書)

観察者の系譜―視覚空間の変容とモダニティ (以文叢書)

163(78)
風景の図像学

風景の図像学

【3章まで読了】