一柳廣孝・吉田司雄編著『映画の恐怖』(2007)メモ

映画の恐怖 (ナイトメア叢書)

映画の恐怖 (ナイトメア叢書)

映画は、その始原から深く「怪異」とリンクしつづけてきた。テレビドラマ『学校の怪談』の脚本家・小中千昭へのロングインタビューを筆頭に、ヒッチコック論や中国・台湾のホラー映画論など、充実したラインアップで映画がもたらす「恐怖」を解明する。

目次
「闇」への想像力をかきたてるために──「ナイトメア叢書」刊行にあたって 一柳廣孝
はじめに 吉田司雄
第1章 ホラー・ファンダメンタリストの原点──小中千昭インタビュー
 ホラー・ファンダメンタリストの原点──小中千昭インタビュー 聞き手:一柳廣孝吉田司雄
  1 「学校の怪談」という磁場
  2 恐怖の起源に迫る
  3 〈霊〉を書き、撮るということ
第2章 映画の恐怖をたずねて
 剥き出しの恐怖と接する 梅本洋一
 「紀子」の首──『晩春』の無気味さについて 中村秀之
 フリークス、モンスター、マッドサイエンティストの狂演 井上貴子
第3章 恐怖は伝播する
 『カメラマンの復讐』──ヴワディスワフ・スタレーヴィチの初期アニメーション映画におけるグロテスク性について 中野 泰
  1 アニメーション映画の基本的特質
  2 ストップモーション表現とスタレーヴィチの独自性
  3 実物志向
  4 グロテスクな動き
  5 グロテスクな笑い
 人間と幽霊/妖怪の間──中華映画圏の怪奇映画小論 晏●(女偏に尼)
  1 怪奇映画でのグロテスクとポリティクス──馬徐維邦
  2 怪異のジェンダー学──香港映画
  3 恐怖と笑い
 ヒッチコック映画──「日常」の恐怖 碓井みちこ
  1 台所の日常──『引き裂かれたカーテン』
  2 アパートの「日常」──『フレンジー
 『妖婆 死棺の呪い』論──ゴーゴリのロシアからプトゥシコのソ連へ 梅津紀雄
  1 ニコライ・ゴーゴリの中篇小説『ヴィイ』とその周辺
  2 修道院の寄宿生たち
  3 老婆との一夜
  4 百人長の屋敷
  5 第一夜
  6 第二夜
  7 第三夜
  8 エピローグ
  9 ヴィイはどこに由来するのか
[連載]
真夜中のセクシュアリティ(第4回)
 「文化的」な主体の病──黒沢清山本文緒ドッペルゲンガー、そして『叫』 久米依子
  1 赤い服の幽霊
  2 分身と争うこと
  3 新世紀のドッペルゲンガー
書棚の隅に何かいる(第1回)
 「天命学院講習録」──最後の気合術師・濱口熊嶽の教え 一柳廣孝
第4章 死者は偏在する
 愛と幽霊は流れ続ける──ジョン・カサヴェテス『オープニング・ナイト』における演技とシャーマニズム 助川幸逸郎
 原点としてのシャワールーム──『サイコ』によるホラー映画史 進藤洋介
  1 『サイコ』
  2 スプラッター
  3 サイコ・ホラー
 人間ならざる人間──「ジャパニーズ・ホラー」と恐怖マンガの可能性 川崎公平
  1 「ジャパニーズ・ホラー」とマンガ
  2 人間の引き算
  3 地獄の機械
  4 マンガのおばけ
  5 描線と人間
 死者たちの陽気な祝祭──時代劇映画における“立回り” 紅野謙介
  1 アクションの集積としての立回り
  2 イドー・ダイスキ
  3 明滅する死者たち
第5章 恐怖を読む視点
ブックガイド 川崎公平/諸岡卓真/井上貴翔/成田大典/横濱雄二

p.67「クエイ兄弟の作品に接する観客は、一般劇映画の属性である「物語化」へと組み込まれる経路を一切遮断される。この遮断が実物素材の意味性を凌駕するあり方こそが、前節で述べた「記号の記号」化の究極nほかならない。。「物語化」を拒まれた観客の視線は被写体としての素材の〈物体〉性にも拍車をかけられ、「動き」を現前せしめている生成プロセスそのものへと注がれる。つまりこれは、〈動きの造形性〉ともいえる構造的生成性ー囲碁これを〈テクスチュア〉と称し、被写体の素材そのもの(〈テクスト〉? ※引用者)と区別して使用するーの最も先鋭的な顕現であり…」
p.71「特にイギリス・アメリカでは、バフチン理論をベースにした映画分析の実践が見受けられる、。映画学者ロバート・スタムや、ミハイル・モンゴメリーらがその代表である」

転倒させる快楽―バフチン、文化批評、映画 (叢書・ウニベルシタス)

転倒させる快楽―バフチン、文化批評、映画 (叢書・ウニベルシタス)

ミハイル・バフチン全著作〈第5巻〉小説における時間と時空間の諸形式 他―一九三〇年代以降の小説ジャンル論

ミハイル・バフチン全著作〈第5巻〉小説における時間と時空間の諸形式 他―一九三〇年代以降の小説ジャンル論

p.104

52:06〜
p.108 注(1)「この「日常がそのまま非日常の世界になる恐怖」という本稿のテーマは、ジル・ドゥルーズ『シネマ』第1巻第12章のヒッチコック論に影響を受けたものである」「ドゥルーズによれば、ヒッチコック映画は古典的物語映画から現代映画への以降を決定的にしたとされる。なぜなら、ヒッチコック映画では、キャメラの存在または具体的な対象が登場人物の身体よりも前面に出て、本来は登場人物の身体がなければ互いに結び付かないような諸イマージュを連携させて、観客の解釈を促すからである」「つまり、登場人物の身体よりも観客の解釈が諸イマージュを連携させるという意味で「関係」、あるいは、観客の解釈がすでにそこに織り込まれているという意味で「心的イマージュ」とも呼び、古典的物語映画のイマージュから区別するのである」
p.109 注(4)「ジジェクが説明するヒッチコック映画の特徴は、「観客の安全な場所と映画内世界とを隔てる距離が突然崩壊する」ことである」※ ジジェクは『フリンジ―』を挙げながらこう説明するが、『裏窓』にしてもこうした解釈は極めてありふれている。
p.134 注(2)
映画の授業―映画美学校の教室から

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p.206 ブックガイド
カリガリ博士の子どもたち―恐怖映画の世界

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