クラッシュ・オブ・クランで日本人が負けるワケ

 クラッシュ・オブ・クラン(以下「クラクラ」と省略)はじめて2,3週間ほど。最近では、パズドラを超えるほどのめり込んでいる。というより、パズドラならば数十分から数時間必要なスタミナ回復の時間がクラクラの場合は非常に短いので、パズドラをプレイできない時間をこちらで潰すという並行プレイで楽しんでいる。

 今回は、クラクラにおける日本人クランの運営の下手さについて述べたい。以前、Twitterでこのようにつぶやいた。「国内クランが今ひとつ盛り上がらず、海外と比較して弱小なのは、日本語版が遅れたためだけではなく、日本人のコミュニティ維持能力が著しく欠如しているためではとの疑念が確信に変わった。プレイスタイルの異なる他者を尊重できず小さな諍いで物別れする」。

 あくまで思いつき程度で述べたものなので、この仮説がどこまで妥当なものであるか検証が求められるだろう。ここでは、さしあたり、3,4のクランに所属して上記仮説が経験則的に導出された経緯を書いておこう。現在の所属クランBの前に所属していたクランAは実にヒドい有様だった。仮説の大部分はここでの体験に依拠している。

 噂によれば、国内クランは登録したものの放置状態というプレイヤーが少なからずおり、援軍要請してもスルーされる所謂「過疎クラン」が多数存在するらしい。そこで、「体育会系」をうたうクランAに加入した。当初は良クランであるように思われた。援軍要請すればものの数秒も経たないうちに、クラン一杯の援軍が送られ、新参者が円滑にプレイできる環境だったことは間違いない。しかし、徐々にクランAの問題が明らかになってきた。このクランの管理人(ゲーム内では「リーダー」)は、いわゆる荒らしや問題発言、行動といった、クランの秩序を乱すわけでもないプレイヤーを、明確な基準もなしに次から次へと追放している情報がチャット欄に流れてきたのである。

 しかし、リーダーあってのクランということもあり、下手に逆らって追放されても災難と考えたのだろうか、他の構成員は、抗議の声を上げたり、追放基準の明確化を要求するわけでもなく、こうした現状を見て見ぬふりでスルーする状況が続いた。私が追放されたのは、その矢先の出来事である。私が他構成員とチャット欄にて、同ゲームを課金プレイしているかどうかを雑談していると、突然なんの忠告もなしに追放されてしまったのである。

 いまから考えれば、追放の理由はいくつか挙げることもできる。たとえば、私と雑談していた相手は、課金してまでのめり込むプレイヤーをバカにしたと受け取れるような発言をしていたし、あるいは私がパズドラの名前を出したことが理由かもしれない。クラクラ界隈では、コラボキャンペーン以降急増した「パズドラ民」の「民度」の低さが悪しき噂として広がっていたため、私をパズドラ民と判定したのだろうか。

 しかし、問題はそこではない。組織運営に際して、リーダーが組織を統制する論理や制裁(サンクション)を与える基準を構成員に開示することなく、秘匿された個人的判断のみでクランを支配するガバナンスの手法にある。このような統治のスタイルを独裁という。クラン運営(あらゆる組織運営も同様であるが)に際して、特定のリーダーの意思決定が全体を統制するのはシステム設定上、自明の理である。しかし、必ずしもこの事実をもってして、リーダーのあらゆる個人的判断を「やむをえぬもの」として無条件に受け入れるのが、あるべき統治であるはずがない。組織をあずかる以上、リーダーは構成員に対して、さらには組織そのものに対して、統治の論理、組織運営を規定する法、肯定的/否定的サンクションが与えられる基準といった、運営に伴う各種ルールを開示し、構成員の承認を得た上で、統治がはじめて容認されるのが民主主義的統治のあり方である。ここにて構成員は、秘匿されたリーダーの恣意的判断に怯えることなく、安心して日々の活動を行うことが可能となる。

 これは敷衍して考えれば、独裁制と民主制、どちらが、より「効率的」であるかを明らかにする実験だと解釈することができる。不明確な基準を独占することで恐怖政治を行うリーダーによる突然の制裁に怯えながら奴隷化する平民で構成される独裁制か、あるいは情報の開示とあらゆる個人を尊重する民主制のどちらが、より効率的に社会を発展できるのか。国内クランが弱小である理由に、日本人の組織運営やコミュニケーション能力の欠如を見出すことができるかもしれない。

 事実、クランAは、私が追放されて数日後、内紛が発生したのだろうか、構成員はかつての40数人から激減し、リーダーと彼の現実の友人らしい5人程度にまで削減され、さらに数日後、リーダーの名前すらなくなっていた。個人の恣意的判断で組織を統治しようとする独裁制の結末など、所詮はこの程度のものである。今となってはあのタイミングで追放されたのは、ちょうどよかったのかもしれない。クランAをトロフィー数で抜いて、私を追放したリーダーを叩きのめしてやろうという目論見は、残念ながら実現できずに終わりそうだが。