鈴木晃志郎, 于燕楠「怪異の類型と分布の時代変化に関する定量的分析の試み」『E-journal GEO』2020 年 15 巻 1 号 p. 55-73

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今日の地理学において,幽霊や妖怪を含む怪異は,専ら民俗学的な手法に依拠して検討されている.しかし隣接分野では,定量的な手法に基づいた知見が数多く存在し,客観性と厳密性を確保することによって学術的信頼性を高める試みが多くなされている.そこで本研究は富山県を対象とし,今からおよそ100年前(大正時代)の地元紙に連載された怪異譚と,ウェブ上に書き込まれた現代の怪異に関するうわさを内容分析し,(1) 怪異を類型化して出現頻度の有意差検定を行うとともに,(2) カーネル推定(検索半径8 km,出力セルサイズ300 m)とラスタ演算による差分の算出により,怪異の出没地点の時代変化を解析した.その結果,現代の怪異は大正時代に比して種類が画一化され,可視性が失われ,生活圏から離れた山間部に退いていることが示された.

 

ベン・グリーン,中村健太郎,酒井康史訳『スマート・イナフ・シティ -テクノロジーは都市の未来を取り戻すために』(2019=2022)

 

過剰なテクノロジー信仰がもたらす「技術中心の」スマート・シティを回避するにはどうすべきか。


謝辞

1章 スマート・シティ---水平線上の新時代
2章 住みやすい都市---テクノロジーの限界と危険性
3章 民主的な都市---テクノロジーの影響に関する社会的意思決定
4章 公正な都市---機械学習の社会的、政治的基盤
5章 責任ある都市---テクノロジーによる非民主主義的な社会契約を回避する
6章 革新的な都市---都市行政における技術変化と非技術的変化の関係
7章 スマート・イナフ・シティ---過去からの教訓と未来にむけたフレームワーク


文献

訳者あとがき

 

辻仁成著『なぜ、生きてみるのかと考えてみるのが今かもしれない』(2020)

 

フランス在住の作家・辻仁成氏が、新型コロナの感染拡大とともに変化する生活の様子をしたためたDesing Storiesのブログを緊急出版!
新型コロナによって、「生」や「死」、「人とのかかわり」、「生き方」について、守るべき人や守るべきものを持つ人へ捧げる1冊。書下ろしあり。

 

青木耕平、加藤有佳織、佐々木楓、里内克巳、日野原慶、藤井光、矢倉喬士、吉田恭子著『現代アメリカ文学ポップコーン大盛』(2020)

 

「web侃づめ」の人気連載ついに書籍化。ブラック・ライブズ・マター(BLM)、ノーベル文学賞を受賞したばかりの詩人ルイーズ・グリュックなど最新の動向についても大幅に増補した決定版!

座談会「正しさの時代の文学はどうなるか?」(ゲスト:柴田元幸さん)を収録。

【目次】

はじめに(青木耕平)

執筆者紹介

 

CHAPTER 1 

現代アメリカ文学のおもしろさ

ひげを生やしたハックとトム──ロバート・クーヴァー『西部のハック』(里内克巳

蚊が語るアフリカ100年の人間模様──ナムワリ・サーペル『オールド・ドリフト』(里内克巳

竜の風と共に去りぬ──ル=グウィン遺稿『ゲド戦記』真の最終章「Firelight」を読む(青木耕平) ★試し読みはこちら

人はテロリストに生まれるのではない──カラン・マハジャン『小さな爆弾たちの連合』あるいは我らの時代(青木耕平)

取り残された人たちへの回路──ルシア・ベルリンの作品をめぐって(日野原慶)

ルイーズ・グリュック──「わたし」と対峙する詩人(吉田恭子)

 

CHAPTER 2 

浮かび上がるアメリカ社会

 “America” feat. Elvis Presley, 2018 Remix(藤井光)

アウトソースされた苦しみ──ふたつの短編小説から(藤井光)

切り離されるもの──リン・マー『断絶』をめぐって(藤井光)

スティル・ナンバー・ワン・アメリカン・サイコ──ブレット・イーストン・エリス、9年ぶりの帰還(青木耕平)

ウェルカム・トゥー・(ポスト)エンパイア──B.E.エリス『ホワイト』part 2(青木耕平)

本日限定のセール──21世紀の暴力とゾンビ文化と翻訳と(藤井光)

『ビラヴド(愛されし者)』から『アンべリード(葬られぬ者)』へ──ジェスミン・ウォードとアメリカの10年(青木耕平)

文学を成功作と失敗作に分けてみよう──リチャード・グレイが提唱するフィクションの好ましきあり方(矢倉喬士)

分断されたアメリカにようこそ──T.ジェロニモ・ジョンソンの小説(里内克巳

 

CHAPTER 3 

世界中を旅しながら 

九龍に充実するオルタナティヴなリアル──香港バプテスト大学国際作家ワークショップ滞在記1(吉田恭子) ★試し読みはこちら

三首の女子がスペキュラティヴ・フィクションをスペキュレイトする──香港バプテスト大学国際作家ワークショップ滞在記2(吉田恭子) ★試し読みはこちら

コルソン・ホワイトヘッドの基調講演中は日本庭園を回遊していました──ポートランドAWP19参戦記(吉田恭子)

哲学者と文学者を同じ部屋に2日間閉じ込めてみた──ラトガース大学翻訳ワークショップ報告(吉田恭子)

 

CHAPTER 4 

魅力的な作家たち 

居心地のわるい読書──ハニャ・ヤナギハラ『あるささやかな人生』(加藤有佳織) 

こわかわいい創造の物語──モナ・アワド『バニー』(加藤有佳織) ★試し読みはこちら

3日目のアザの色みたいにきれいだ──パトリック・デウィットによる4つの小説(加藤有佳織)

オレンジのブックリスト──ジェイク・スキーツの詩集とシェリー・ディマラインの小説(加藤有佳織)

ともだちのともだち──ジェニファー・クレイグ『ポット始めました』とシークリット・ヌーネス『友だち』(加藤有佳織) ★試し読みはこちら

「素描」を書く者、「素描」を読む者(藤井光) ★試し読みはこちら

「生き延びる」とは何か、「俺たち」とは誰か(藤井光)

残像に目移りを──ドン・デリーロ『ポイント・オメガ』におけるスローモーションの技法(矢倉喬士)

孤独な人のための文学──ピーター・オーナーのささやかな世界(里内克巳

 

CHAPTER 5 

フェミニズムアメリカ文学 

#MeToo時代のクリエイティヴ・ライティング(吉田恭子)

ダメ男のレガシーを語る女たち──パートI:アレグザンダー・ハミルトンの場合(吉田恭子)

ダメ男のレガシーを語る女たち──パートII: ラフカディオ・ハーンの場合(吉田恭子)

ゆがんだカラダ、ひびく声──カルメン・マリア・マチャドの小説(日野原慶)

ショーン・ペンよ、ペンを置け──“史上最悪”のデビュー作『何でも屋のボブ・ハニー』(青木耕平)

ガールズ・パワーからホラーへ──クリステン・ルーペニアンによるポスト・トゥルース時代の小説戦略(矢倉喬士)

本でできた虹の彼方へ──レインボー・ブックリスト(佐々木楓)

文学の不気味の谷を越えて──メレディス・ルッソの『イフ・アイ・ワズ・ユア・ガール』(佐々木楓)

 

CHAPTER 6 

FATをめぐるものがたり 

FATをめぐるものがたり(1)──『ダイエットランド』と、あるひとつの解放宣言(日野原慶) ★試し読みはこちら

FATをめぐるものがたり(2)──ふとっていることの語源学(エティモロジー)と物語学(ナラトロジー)(日野原慶) ★試し読みはこちら

FATをめぐるものがたり(3)──『飢える私』と「残酷な」世界(日野原慶)

FATをめぐるものがたり(4)──『ミドルスタイン一家』と『ビッグ・ブラザー』における家族と身体(日野原慶) 

 

CHAPTER 7 

文学は文字だけではない 

文字は文字ではいられない──英語授業でグラフィック・ノベルを教える(矢倉喬士)

君、バズりたまふことなかれ──沈黙を取り戻すグラフィック・ノベル『サブリナ』(矢倉喬士)

スケートリンクから宇宙の果てへ──ティリー・ウォルデン『スピン』『陽光に乗って』(里内克巳

あ・・・・・・ありのまま今起こったことを話すぜ!──ドラマ『13の理由』シーズン3で人は誰しも被害者と加害者の側面を持つという作風への批判が相次いだかと思ったら、いつのまにかオルタナ右翼が映画『パシフィック・リム』を理想的な世界とみなしている事実に気づかされていた(矢倉喬士)

ソーシャル・ネットワークと文学──アダム・ジョンソン『フォーチュン・スマイルズ』/「ニルヴァーナ」(日野原慶)

タイラー・ダーデンふたたび、みたび──『ファイト・クラブ2』そして『ファイト・クラブ3』(青木耕平)

トランプのいない世界の風刺──『サウスパーク』の受難(青木耕平)

お目醒めはほどほどに──『デトロイト ビカム ヒューマン』における保守的ジェンダー観と人種表象について(矢倉喬士)

 

CHAPTER 8 

翻訳とは何か? 

英語を壊すお・も・て・な・し──多和田葉子の『献灯使』とマーガレット満谷の『The Emissary』の翻訳術(矢倉喬士)

柴田さんと村岡さん──『ハックルベリー・フィンの冒けん』の新しさ(里内克巳

詩人のように翻訳し、翻訳者のように創作せよ──パートI:翻訳とアイスランド語の未来(吉田恭子)

詩人のように翻訳し、翻訳者のように創作せよ──パートII:アメリカ手話の翻訳詩を「読んで」みる(吉田恭子)

 

COLUMN 

文学の現場はどこにあるのか──イギリスからみた文学創作(吉田恭子)

 

座談会「正しさの時代の文学はどうなるか?」 

加藤有佳織×柴田元幸×藤井光×矢倉喬士×吉田恭子

 

あとがき 

おわりに(矢倉喬士) 

 

本格ミステリ作家クラブ選・編『ベスト本格ミステリ2018』(2018)

 

2017年に発表された本格ミステリの短編と評論から、本格ミステリのプロフェッショナルが選びぬいたベスト作品集!――今読むべき、最先端の本格ミステリがこの一冊に! 本格ミステリ作家クラブが選んだ2017年のベスト本格ミステリ短編&評論のすべて!

小説◎
夜半のちぎり 岡崎琢磨
透明人間は密室に潜む 阿津川辰海
顔のない死体はなぜ顔がないのか 大山誠一郎
首無館の殺人 白井智之
袋小路の猫探偵 松尾由美
葬式がえり 法月綸太郎
カープレッドよりも真っ赤な嘘 東川篤哉
使い勝手のいい女 水生大海
山麓オーベルジュ『ゆきどけ』 西尾維新
ヌシの大蛇は聞いていた 城平京

評論◎
吠えた犬の問題 有栖川有栖

 

『ユリイカ 2022年9月号』「特集 Jホラーの現在-伝播する映画の恐怖」

 

❖インタビュー
恐怖の感覚のありか / 高橋洋 聞き手=宮本法明

❖どこから来たのか、どこへ行くのか
母娘と「うつす」こと——高橋洋の映画世界における女性性の考察 / 木下千花
生まれることは呪われること——Jホラーの妊娠をめぐる表象 / 宮本法明
「復興運動」としてのJホラー——幽霊映画の埋もれた水脈とシネマの妄想 / 横山茂雄
〈怖れるもの〉から〈怖れられるもの〉へ——『霊的ボリシェヴィキ』の霊術的根拠 / 栗田英彦 

❖Jホラーは見つめ返す
『ほんとにあった怖い話』——再発DVD、再認識、その真価! / 鶴田法男
霊的マイノリティーが問う「体感的霊障はJホラー作法で表現可能なのか?」問題 / 三宅隆太
呪いのその先を歩く / 中川奈月

❖マンガ
はじまりのJホラー / 椎名うみ

❖貞子と伽椰子に導かれて
『リング』という希望 / 郡司ペギオ幸夫
怨霊たちのいるところ——『リング』と『呪怨』のリメイク比較 / 小澤英実
呪怨シリーズ」と永遠回帰の思弁的再解釈 / 仲山ひふみ
「災厄」としての妊娠・出産——ドラマ『呪怨 呪いの家』におけるジェンダー / 橋迫瑞穂

❖創作
『幽霊菌』と密室の謎 / 大島清昭

❖Jホラーよ、憑依せよ
映画版の貞子が幽霊の目撃に影響があった? / 田辺青蛙
ホラー映画に何が求められているのか / 芦花公園

❖日本の映画はおそろしい
仄暗い水の底からの叫——団地映画としてのJホラー / 今井瞳良
上半身と下半身の「あいだ」——黒沢清『予兆 散歩する侵略者』における歩行と手 / 早川由真
「生き返り」の幻視——ホラー映画の手前で / 川崎公平
蜂起せよ、と女優霊は言った / 田村千穂
Jホラーにおけるいくつものジェンダー化された空間(gendered spaces)——映画『劇場版 零 ゼロ』の〝女子だけの世界〟 / リンジー・ネルソン 訳=吉田育未
Jホラーとゾンビが接するところ / 福田安佐子

❖いまここにある恐怖
今もなお 無気味なもの / 小中千昭
〈恐怖〉にアクセスするための回路——『リング』『残穢』そして『裏バイト:逃亡禁止』へ / 佐々木友輔

❖戦慄の領域へ
地理学で読み解く『呪怨』と「恐怖の村」 / 鈴木晃志郎
村と駅——ネット怪談における異界的儀礼異世界的バグの存在論 / 廣田龍平
解放区 / 逆卷しとね
Jホラーの何が心霊実話なのか?——実話怪談、ドキュメンタリー、心霊写真 / 高田敦史

❖座談会
恐怖の果ての果てまで / かぁなっき×寺内康太郎×皆口大地

❖Jホラーを観測する
「呪いのビデオ」の現在地——氾濫する心霊ビデオたち / 鈴木潤
「Jホラーゲーム」は可能か?——メタ・インターフェースと降霊としてのプレイ / 向江駿佑
『真景累ケ淵』と『怪談』における恐怖の語り——Jホラーは怪談噺の夢を見るか? / 斎藤喬
霊と籤——写真と霊のあらわれの演劇性または意図性について / 大岩雄典
死の投影者(projector)による国家と死——〈主観性〉による劇空間ならびに〈信〉の故障をめぐる実験場としてのホラーについて / 山本浩貴(いぬのせなか座)

❖資料
Jホラーの現在をめぐる作品ガイド / 藤原 萌+宮本法明


❖忘れられぬ人々*11 
故旧哀傷・小林昭 / 中村稔

❖物語を食べる*20 
二本足の豚たちが動物農場をゆく /赤坂憲雄

❖詩
ここにいる人たちはみんな回転するものが、自動的に回転するものが好きだ / 山田亮

❖今月の作品
たかすかまさゆき・小川芙由・奥山紗英・広橋山羊 / 選=大崎清夏

❖われ発見せり
赤子と青豆 / 秋元陽平