アシュリー・ミアーズ著,松本裕訳『グローバル・パーティーサーキットの社会学』(2020=2022)

 

元モデル研究者が超富裕層のパーティー界に潜入し、「モデルとボトル」の世界を分析。いかにして女性美は男のステータスに転換されるか?

「蚊に刺され、午後の暑さで汗まみれになった私が目を覚ますと、午後5時だった。ここはマイアミのスター島にある別荘のゲストハウス。…26歳のクラブプロモーター、サントスにくっついて3日前にマイアミに到着して以来、私はクラブからクラブへ、ホテルのペントハウスからパフ・ダディの早朝プールパーティーへと、パーティーをはしごしまくっていた。…私は世界のVIP向けのパーティーシーンに潜入し、彼らが膨大な可処分所得をどう使っているのか、そして自分の金を無駄に投げ捨てるという、第三者から見れば馬鹿げている現象についてどう思っているのかを理解しようと試みた。…そこでは女性の身体が男性のカネに照らして査定される。次々と運ばれるシャンパンのボトルは…名声と男性優位のヒエラルキーシステムの中枢にある一種の儀式なのだ」(プロローグ)

謝辞

プロローグ Sunday, 5 p.m., Miami

1 俺たちがクールだ Sunday, 11:30 p.m., New York City
新たな金ぴか時代  モデルとボトル  フェイスコントロール  男たちのヒエラルキー  A級の経済学  VIPに加わる

2 デイタイム Tuesday, 2 p.m., New York
ドレの人脈  ナンパ  最高なやつ  手広いトラヴィス  ゆるいエンリコ  夢見る

3 ポトラッチ Saturday, 12 a.m., Miami
ポトラッチ  浪費を演出する  クジラとレタス  沸騰  バカなカネ  美を浪費する  娯楽労働

4 モデルキャンプでの密売 Saturday, 2 a.m., the Hamptons
和ませ役  クジラを釣り上げる  パーティー好きの女の子と良い女の子  ソフトな売春婦  女性  女の子資本  密売とその快楽

5 フー・ラン・ザ・ガールズ? Tuesday, 2:30 a.m., New York
スカウト  報酬  セックスワーク  友だち関係  コントロール  バケーション  マダム  タダ酒のコスト  利用と酷使

6 底辺から Sunday, 6 a.m., Miami
タダの紙切れ  クイズ$ビリオネア  大親友  人種資本の諸刃の剣  社会資本の限界

7 閉鎖 Closure
VIPから抜ける

研究補遺

索引
原注
参考文献

 

ヴァージニア・ウルフ著『自分だけの部屋』(1929=1988)

 

「女性が小説なり詩なりを書こうとするなら、年に500ポンドの収入とドアに鍵のかかる部屋を持つ必要がある」(V・ウルフ)

経済的自立と精神的独立を主張し、想像力の飛翔と軽妙な語り口によって、女性の受難史を明らかにした軽妙な長篇エッセー。フェミニズム批評の古典。

 

中室牧子, 津川友介著『「原因と結果」の経済学 ーデータから真実を見抜く思考法』(2017)

 

「メタボ健診を受けていれば健康になれる」「テレビを見せると子どもの学力が下がる」「偏差値の高い大学に行けば収入は上がる」はなぜ間違いなのか? 世界中の経済学者がこぞって用いる最新手法「因果推論」を数式なしで徹底的にわかりやすく解説。世のなかにあふれる「根拠のない通説」にだまされなくなる!

はじめに

メタボ健診を受けていれば長生きできるのか
テレビを見せると子どもの学力は下がるのか
偏差値の高い大学へ行けば収入は上がるのか
「因果推論」を理解すれば思い込みから自由になれる

第1章 根拠のない通説にだまされないために

    「因果推論」の根底にある考えかた

「因果関係」「相関関係」とは何か
因果関係を確認する3つのチェックポイント
1.「まったくの偶然」ではないか
2.「第3の変数」は存在していないか
3.「逆の因果関係」は存在していないか
因果関係を証明するのに必要な「反事実」
タイムマシンがないと反事実は作れない?
反事実を「もっともらしい値」で穴埋めする
「比較可能」なグループでないと穴埋めはできない
反事実を正しく想像できないと根拠のない通説にだまされる?

COLUMN1 チョコレートの消費量が増えるとノーベル賞受賞者が増える?

第2章 メタボ健診を受けていれば長生きできるのか

    因果推論の理想形「ランダム化比較試験」

「実験」を使えば因果関係を証明できる
なぜランダムに割り付けないとダメなのか
「メタボ健診」と「長生き」のあいだに因果関係はあるか
「統計的に有意」とは
健診を受けていても長生きにはつながらない
1200億円の税金が投じられたメタボ健診
「医療費の自己負担割合」と「健康」のあいだに因果関係はあるか
ランド医療保険実験の結果
自己負担割合を高くしても、貧困層以外の健康状態は変わらない

COLUMN2 複数の研究をまとめる「メタアナリシス」

第3章 男性医師は女性医師より優れているのか

    たまたま起きた実験のような状況を利用する「自然実験」

手元にあるデータを用いて、実験のような状況を再現する
「医師の性別」と「患者の死亡率」のあいだに因果関係はあるか
女性医師が担当すると患者の死亡率が低くなる
「出生時体重」と「健康」のあいだに因果関係はあるか
出生時体重が重い赤ちゃんは健康状態がよい

COLUMN3 受動喫煙は心臓病のリスクを高めるのか

第4章 認可保育所を増やせば母親は就業するのか

    「トレンド」を取り除く「差の差分析」

実験をまねる「擬似実験」
前後⽐較は意味がない
前後⽐較が使えない2つの理由
昨年の売上が「反事実」ならば前後⽐較は有効だが……
前後⽐較デザインを改良した「差の差分析」
差の差分析が成立するための2つの前提条件
認可保育所の数」と「母親の就業」のあいだに因果関係はあるか
認可保育所を増やしても母親の就業率は上がらない
最低賃金」と「雇用」のあいだに因果関係はあるか
最低賃⾦を上げても雇用は減らない

COLUMN4 「早く寝ないとお化けが出るよ」は正しい教育法か

第5章 テレビを見せると子どもの学力は下がるのか

    第3の変数を利用する「操作変数法」

新聞の広告料割引キャンペーンを利用する
操作変数法が成⽴するための2つの前提条件
「テレビの視聴」と「学力」のあいだに因果関係はあるか
テレビを見ると偏差値が上がる
「母親の学歴」と「子どもの健康」のあいだに因果関係はあるか
母親が大卒だと生まれてくる子どもの健康状態がよい

COLUMN5 女性管理職を増やすと企業は成長するのか

第6章 勉強ができる友人と付き合うと学力は上がるのか

    「ジャンプ」に注⽬する「回帰不連続デザイン」

「49人の店舗」と「50人の店舗」の違いを利用する
回帰不連続デザインが成⽴するための前提条件
「友人の学力」と「自分の学力」のあいだに因果関係はあるか
学力の高い友人に囲まれても自分の学力は上がらない
「高齢者の医療費の自己負担割合」と「死亡率」のあいだに因果関係はあるか
高齢者の医療費の自己負担割合が増えても死亡率は変わらない

COLUMN6 「ホルモン補充療法」の罠

第7章 偏差値の高い大学に行けば収入は上がるのか

    似た者同⼠の組み合わせを作る「マッチング法」

似かよった店舗を探しだす
複数の共変量をひとまとめにする「プロペンシティ・スコア・マッチング」
プロペンシティ・スコア・マッチングが成立するための前提条件
「大学の偏差値」と「収入」のあいだに因果関係はあるか
偏差値の高い大学に行っても収入は上がらない

COLUMN7 ビジネス版ランダム化⽐較試験「A/Bテスト」

第8章 ありもののデータを分析しやすい「回帰分析」

因果関係の評価に適さないデータしかないときは……
データを表現する「最適な線」を引く
交絡因子の影響を取り除いてくれる「重回帰分析」

COLUMN8 因果推論はどのように発展してきたか

補論① 分析の「妥当性」と「限界」を知る

補論② 因果推論の5ステップ


おわりに


索引


参考文献


因果推論をもっと知りたい人のためのブックガイド

 

クリス・ベイル著,松井信彦訳『ソーシャルメディア・プリズム-SNSはなぜヒトを過激にするのか?』(2021=2022)

 

「われわれのチームは、何千何万というソーシャルメディア・ユーザーの複数年にわたる行動を記述した億単位のデータポイントを収集してきた。自動化されたアカウントを使って新実験を行ったり、外国による誤情報キャンペーンが与える影響について先駆けとなる調査を実施したりしてきた」「その真実とは、ソーシャルメディアにおける政治的部族主義の根本原因が私たち自身の心の奥底にあることだ。社会的孤立が進む時代において、ソーシャルメディアは私たちが自身を——そして互いを——理解するために使う最重要ツールのひとつになってきた。私たちがソーシャルメディアにやみつきなのは、人間に生得的な行動、すなわち、さまざまなバージョンの自己を呈示しては、他人がどう思うかをうかがい、それに応じてアイデンティティーを手直しするという行動を手助けしてくれるからである。ソーシャルメディアは、各自のアイデンティティーを屈折させるプリズムなのだ——それによって私たちは、互いについて、そして自分についての理解をゆがめられてしまう」(本文より)計算社会科学Computational Social Scienceの最先端を走る研究者が、政治的分極化への処方箋を提示する。

1 エコーチェンバーの伝説
エコーチェンバーについてのエコーチェンバー
分極化に向ける新たなレンズ

2 エコーチェンバーを壊したらどうなのか?
エコーチェンバーを壊す
悪いボット、良いボット
謎の解明

3 実際に壊すとどうなるか?
群れることを習うパティー
ジャネット
正しいことはいい気分
ハードリセット

4 ソーシャルメディア・プリズム
大して合理的ではない大衆
ソーシャルメディアとステータス追求
プリズムの威力

5 プリズムが過激主義をあおる仕組み
孤独な荒らしたち
あなたの知らない荒らし
過激主義というカルト
プリズムから映し出される過激主義

6 プリズムは穏健派を“ミュート”する
穏健な大多数
過激主義者との遭遇
失うものが多すぎる穏健派
穏健派の抱く絶望感
穏健派の不在

7 アカウントを削除すべきか?
離れられない理由
プラットフォームが独力では私たちを救えないわけ
私たち次第

8 プリズムをハックする
認識のずれを狭める
プリズムを見て取る
プリズムを通して自分を見る
プリズムを壊す

9 より良いソーシャルメディア
コロナ時代のソーシャルメディア
新手のプラットフォーム
目的を定めたプラットフォーム

付録 調査手法
ボットを使った量的な実験
ボットを使った質的な実験
シミュレーションされたソーシャルメディア・プラットフォーム実験

謝辞
索引/原注/参考文献

 

鵜飼健史著『政治責任-民主主義とのつき合い方』(2022)

 

政治責任を問うことも、それを看過することも日常になってしまったいま、私たちは「政治に無責任はつきものなのだ」という諦念を追認するしかないのか。自己責任論と政治不信の渦中で政治責任を取らせることは可能なのか。H・アーレント丸山眞男などを参照しつつ、政治責任をめぐるもどかしさの根源を理論的に究明する。

はじめに

第1章 無責任な政治のなかの責任
 1 現代政治の責任
 2 責任と日本戦後政治史
 3 信頼が欠如した現代政治

第2章 責任がある
 1 政治責任の形態論
 2 権力と責任
 3 政治責任としての戦争責任

第3章 責任を取る
 1 政治責任結果責任
 2 アカウンタビリティ政治責任
 3 責任を取る政治の構想

第4章 無責任から責任へ
 1 政治問題としての無責任
 2 無責任な政治
 3 なぜ政治責任が取られないのか

第5章 政治責任の未来
 1 責任の自覚
 2 あらためて自己責任を考える
 3 民主主義の責任

あとがき

堀内都喜子著『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(2020)

 

ワークライフバランス世界1位!フィンランド流ゆとりのある生き方。フィンランド人は、仕事も、家庭も、趣味も、勉強も、なんにでも貪欲。でも、睡眠時間は平均7時間半以上。ヘルシンキは、ヨーロッパのシリコンバレーと呼ばれる一方で、2019年にワークライフバランス世界1位に。やりたいことはやる。でもゆとりのあるフィンランド流の働き方&生き方の秘訣を紐解きます。 --このテキストは、paperback_shinsho版に関連付けられています。

1 フィンランドはなぜ幸福度1位なのか
 ・2年連続で幸福度1位の理由
 ・「ゆとり」に幸せを感じる
 ・自分らしく生きていける国
 ・ヨーロッパのシリコンバレー
 ・「良い国ランキング」でも1位
2 フィンランドの効率のいい働き方
 ・残業しないのが、できる人の証拠
 ・エクササイズ休憩もある
 ・コーヒー休憩は法律で決まっている
 ・「よい会議」のための8つのルール
 ・必ずしも会うことを重要視しない
3 フィンランドの心地いい働き方
 ・肩書は関係ない
 ・年齢や性別も関係ない
 ・ボスがいない働き方
 ・歓送迎会もコーヒーで
 ・父親の8割が育休をとる
4 フィンランドの上手な休み方
 ・お金をかけずにアウトドアを楽しむ
 ・土曜日はサウナの日
 ・心置きなく休む工夫
 ・休み明けにバリバリ働くフィンランド
 ・おすすめの休みの過ごし方
5 フィンランドのシンプルな考え方
 ・世界のトレンドはフィンランドの「シス」!?
 ・ノキアのCEOも「シス」に言及
 ・職場でも、シンプルで心地いい服を
 ・偏差値や学歴で判断しない
 ・人間関係もシンプルで心地よく
 ・コミュニケーションもシンプルに
6 フィンラドの貪欲な学び方
 ・仕事とリンクする学び
 ・2人に1人は、転職の際に新たな専門や学位を得ている
 ・学びは、ピンチを乗り切るための最大の切り札
 ・将来を見据えてAIを学ぶ人も多い

 

菅原琢著『データ分析読解の技術』(2022)

 

「データ分析ブーム」がもたらしたのは、怪しい“分析らしきもの”と、それに基づいた誤解や偏見……。本書では、「問題」「解説」を通して、データ分析の失敗例を紹介しながら、データを正しく読み解くための実践的な視点や方法、また、思考に役立つ基礎的な知識やコツを紹介していく。誤った分析をしないため、騙されないための、基本的・実践的な読解と思考の方法とは――。

はじめに 怪しいデータ分析への処方箋
第1章 データ分析読解の基本、因果関係―対象に関する知識と想像力の重要性
第2章 怪しさを感じ取る糸口、議論と数字のズレ―分析を間違いと判断する手順
第3章 結果論は分析ではない―データから要因を探る技術と方策
第4章 データが歪めば結果も歪む―分析対象とデータの取り方に注意する
第5章 「分析したつもり」の落とし穴―気が付きにくいデータの歪み
第6章 幻の因果関係を生み出す交絡因子―三角関係を暴いて相手説を崩す
第7章 散布図に潜む罠―分析の存在理由を問うことが大切
第8章 偽の相関、逆の因果と叫べば勝ちではない―因果関係の丁寧な考察がデータ分析攻略の近道

瀧本哲史『武器としての決断思考』

久米『原因を推論する - 政治分析方法論のすゝめ』

中室, 津川『「原因と結果」の経済学―データから真実を見抜く思考法』

伊藤『データ分析の力 - 因果関係に迫る思考法』