山田宗樹著『百年法』(2012→2015)

 

原爆が6発落とされた日本。敗戦の絶望の中、国はアメリカ発の不老技術“HAVI”を導入した。すがりつくように“永遠の若さ”を得た日本国民。しかし、世代交代を促すため、不老処置を受けた者は100年後に死ななければならないという法律“生存制限法”も併せて成立していた。そして、西暦2048年。実際には訪れることはないと思っていた100年目の“死の強制”が、いよいよ間近に迫っていた。経済衰退、少子高齢化格差社会国難を迎えるこの国に捧げる、衝撃の問題作。

 

写真:篠山紀信,文:中平卓馬『決闘写真論』(1977)

 

かたや、現代日本を代表する写真家。かたや、伝説的存在として知られる写真家・写真評論家。「家」「晴れた日」「旅」など、数々の自信作で迫る篠山に対して、中平は、練りに練った文章で応じる。70年代の熱い息吹に満ちた「幻の名著」、ここに復活。カラー写真も多数収録。

 

ジェニファー・ラトナー=ローゼンハーゲン著,入江哲朗訳『アメリカを作った思想-500年の歴史』(2019=2021)

 

発端において、アメリカは、ヨーロッパの探検者たちが「新世界」に投影した一群の諸観念であった。それらはいかにして合衆国を築き、どのような運動を生み出していったか―。本書は、アメリカ人たちが紡いできた思想的生の物語を、国や時間や文化の境界を越える横断の歴史として描く。思想史とは、時代の問題と向きあった人びとの行為選択から彼らの知的背景を読みとること、そして彼らが生きた経験へ近づくことである。ビューリタニズムからポストモダニズムまで、あるいはトマス・ジェファソンからリチャード・ローティまで、アメリカ史に作用した観念の力を概説する画期的思想史入門。

第1章 諸帝国の世界―コンタクト以前から一七四〇年まで
第2章 アメリカと環大西洋啓蒙―一七四一年から一八〇〇年まで
第3章 リパブリカンからロマンティックへ―一八〇〇年から一八五〇年まで
第4章 思想的権威をめぐる諸抗争―一八五〇年から一八九〇年まで
第5章 モダニズムの諸反乱―一八九〇年から一九二〇年まで
第6章 ルーツと根なし草―一九二〇年から一九四五年まで
第7章 アメリカ精神の開始―一九四五年から一九七〇年まで
第8章 普遍主義に抗して―一九六二年から一九九〇年代まで
エピローグ グローバリゼーションの時代のアメリカ再考、あるいは会話の継続

 

小澤匡行著『1995年のエア マックス』(2021)

 

ファッション界を席巻するスニーカー。人気アイテムは国境を越えての争奪戦が起き、定価の数十倍で転売されるようになった結果、アメリカはもちろん、中国や中東など各国で富裕者層の所有欲求を満たすアイコンに。ネットにはスニーカーにまつわる情報が溢れ、株式のごとくリアルタイムで売買するマーケットまで成立した。『Boon』(祥伝社)や『UOMO』(集英社)で編集を務め、その栄枯盛衰を見てきた小澤氏は、その状況を見て「それはもはや私たちが知っているスニーカーではない」「ターニングポイントは日本で大ヒットしたナイキ『エア マックス 95』だった」と指摘する。業界の第一人者で、著書『東京スニーカー史』(立東舎)も好評を博した著者はこれまで、そしてこれからのスニーカーの行方をどう考えているのか? NBA、ヒップホップ、裏原宿、SNS――。スニーカーの先に、世界はある。

第1章 "テン"年代のスニーカー
世界に先駆けてブームを経験した国、日本/スマートフォンが生んだ気軽さ/本質の先に見えたベーシック/ウィメンズと市民権/デジタルネイティブが起こしたリバイバルブーム/セレブリティと 21世紀型ヒップホップカルチャー/中国人とインバウンド/聖地としての東京/EC とフェイク/需給バランスと転売ヤー/株式化したスニーカー/アプリとリセール

第2章 「シューズ」から「スニーカー」へ―90年代前半までに何が起きたか
日本独特のヴィンテージカルチャー/NBA とヒップホップカルチャー/マイケル・ジョーダンの登場「/エア ジョーダン 1」は本当にNBA のルールに抵触したのか/日本では評価されなかった初期エア ジョーダン「/エア ジョーダン 5」日本発売「/エア マックス」の進化/アディダスの本質回帰『/SLAM DUNK』とバルセロナ・オリンピック/ストリートバスケットがもたらしたもの/価値をメディアが整理する/グランジとローテクスニーカー

第3章 1995年のエアマックス―世界の何を変えたのか
「この新作は売れないかもしれない」/「エア マックス95」が生まれるまで/1995年に「エア マックス」は日本でどう受け止められたのか"/国民的ブーム"の真実「/スラム街」化したマーケット「/エア マックス狩り」/ナイキジャパンの勝算と誤算

第4章 インターネットとスニーカー―冬の時代の先に
魔の1998年/日本市場を狙ったアメリカ企業の失敗/ショップの苦境/冬の時代とストリート/藤原ヒロシと「ダンク」復刻/ハイテクの変容/モードとの融合/ハイブランドとスポーツメーカーの協業/インターネットはスニーカーに何をもたらしたのか

第5章 変容するスニーカー―ミレニアム以降に起きたこと
なぜ「ダンク」はストリートを支配できたのか/東京で起きた小売店の快進撃/神格化する藤原ヒロシと進むプレミアム化/ナイキ SB 誕生/ホワイトダンク展の意味/あらゆるものと結びついた「エア フォース 1」/幹を太くした「スーパースター」/ナイキとアップル/あふれる情報とその整理/ニューバランスのぶれなさ/ファストファッションの浸透がもたらしたもの「/ヴィンテージの進化」としてのコンバース アディクト/世界を席巻するニューバランス

最終章 スニーカーの今とこれから
「東京発」から「ヒップホップ発」へ/iPhone がもたらした情報革命と「エア ジョーダン」復活/ヘルシー志向の先で飛躍したニューバランス「/スタンスミス」から見たリブランディングの価値/2010年代前半の「エア マックス」/ベアフット(裸足)思想が到達した「編み」/変わらない藤原ヒロシの影響力/アーバンカルチャーとシュプリーム/ビッグ・コラボレーションの功罪/プレ値を更新しているのは誰か/ダッドシューズはなぜ人気を博したのか/ウィメンズの開花がもたらしたもの/アートとして/国際化が進む先で

 

綿野恵太著『みんな政治でバカになる』(2021)

 

トランプ当選をいまだに信じるひとに、Qアノン信者。世界を操るのはディープステートで、コロナワクチンにはマイクロチップが……。なぜかくもフェイクニュース陰謀論が後を絶たないのか? それは私たちが「バカ」だから! 人間の脳内には「直観システム」と「推論システム」という異なる認知システムがある。この認知科学の「二重過程理論」をもとに、今世界で起きている政治的な分断と対立と混乱の図式を描き出す。我々が囚われている「バカの連鎖」から抜け出すにはどうしたらよいのか? 最新の進化心理学認知科学の知見に基づいてその脱出口を探る長編評論。新しい人間像を構築せよ!

第1章・大衆は直観や感情で反応する
第2章・幸福をあたえる管理監視社会
第3章・よき市民の討議はすでに腐敗している
第4章・ポピュリズム道徳感情を動員する
第5章・もはや勉強しない亜インテリ
第6章・部族から自由になるために

 

写真:ロベール・ドアノー,解説:ブリジット・オリエ『ドアノー写真集 パリ遊歩 1932-1982』(1998)

 

現代フランスでもっとも人気ある写真家のひとりドアノーは,生涯パリとその郊外の街並みと人びとにのみ関心をもちつづけた.半世紀にわたりパリの石畳を縦横に歩きまわり,路上に展開する日常のドラマにレンズを向けたその膨大な作品群のなかから,ヒューマン・ドキュメントとして心にのこる貴重な作品を集大成するもの.

 

吉田敬著『社会科学の哲学入門』(2021)

 

社会科学はいかなる「科学」か? 科学哲学の観点からその営みの根本へとガイドする。哲学と社会科学を学ぶ全ての人のための入門書。

序 章 社会科学の哲学を学ぶとはどういうことか
 1. 社会科学の哲学とは何か
 2. 社会科学の哲学が研究対象とする社会科学とは何か
 3. 社会科学の哲学をあえて論じるのはなぜか
 4. 社会科学と社会科学の哲学はどのような関係にあるのか
 5. この本が必要なのはなぜか
 6. この本の構成

第1章 社会科学は社会現象をどのように捉えようとするのか
 1. はじめに
 2. 方法論的個人主義
 3. 方法論的集団主義
 4. 方法論的個人主義の制度論的転回
 5. おわりに

第2章 社会科学の方法と目的はどのようなものか
 1. はじめに
 2. 自然主義の前身としての実証主義
 3. 現代の社会科学において自然主義が有力である理由
 4. 解釈主義
 5. 自然と規約の二分法とそれが見過ごしている第三のカテゴリー
 6. 予測にまつわる方法論的問題と方法の単一性
 7. 行為の意図せざる結果を説明するための状況分析
 8. おわりに

第3章 社会科学の理論は何のためにあるのか
 1. はじめに
 2. 一般科学哲学における実在論反実在論の論争
 3. 合理的経済人の起源とサイモンの批判
 4. フリードマン道具主義的方法論
 5. 合理的経済人とその批判
 6. 行動経済学の展開
 7. 強い互恵性と神経経済学
 8. おわりに

第4章 社会科学はものの見方の一つにすぎないのか
 1. はじめに
 2. 異文化の合理性をめぐる様々な論争
 3. 文化相対主義の議論と問題点
 4. 文化の多様性を擁護しつつ相互批判を可能にする方法
 5. 女性器切除の問題
 6. おわりに

第5章 社会科学において認識と価値はどのような関係にあるのか
 1. はじめに
 2. 事実と価値の二分法
 3. ムーアの自然主義的誤謬
 4. ヴェーバーの価値自由としての客観性と価値判断論争
 5. 20世紀半ばの英語圏における価値自由論
 6. 価値自由と社会的・政治的文脈
 7. 価値自由とスタンドポイント理論
 8. おわりに

第6章 社会科学と自然科学の関係はどのようなものか
 1. はじめに
 2. 心理学の還元可能性に関する論争
 3. 社会生物学進化心理学の還元主義的研究プログラム
 4. ローゼンバーグの社会科学無効化論
 5. ソーヤーの社会法則擁護論
 6. キンケイドの非還元主義
 7. おわりに

終 章 この本はどこにたどり着いたのか
 1. この本のまとめ
 2. この本が提示した見解と今後の展望

あとがき
索  引