中野敏男著『ヴェーバー入門ー理解社会学の射程』(2020)

 

社会的行為の動機を理解し、その内面から人間と社会のあり方を考える。これが、近代社会学の祖とされ、社会科学全般に決定的影響を与えたマックス・ヴェーバーの学問の核心にあった。だが、奇妙なことに従来の議論では、彼自身のこの問題意識が見落とされている。本書では、ヴェーバー思想の根幹に「理解」を位置づけ、その業績全体を、理解社会学の確立に向かう壮大なプロジェクトとしてとらえなおす。主要著作を丹念に読み込み、それらを貫く論理を解き明かす画期的入門書。

第1章 ヴェーバー理解社会学の誕生

 動機の理解に関心を寄せる
 なぜ理解を方法とするのか―二つの流出論批判の意味
 理解はどうして可能なのか―解明的理解への道を開く
 理解を学問方法にまで鍛える
第2章 理解社会学の最初の実践例―『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を読む

 理解社会学の起動
 「資本主義の精神」の解明的理解―理解社会学の「問題の立て方」
 「禁欲」の動機理解―プロテスタンティズムの価値分析
 禁欲と資本主義の精神―その帰結から始まる問い
第3章 理解社会学の仕組み―『経済と社会』

 『宗教ゲマインシャフト』)を読む(理解社会学の基礎論としての『経済と社会』
 基礎概念の編成―行為と秩序の緊張
 『宗教マインシャフト』の成り立ち
 宗教倫理への問いを定位する―救済宗教への視覚
第4章 理解社会学の展開―『世界宗教の経済倫理』を読む

 比較宗教社会学への展開
 「物象化」という問題視角
 儒教とピューリタニズム
 普遍史的関心の射程

11, 116 宇都宮, 中野, 小林, 水林編著 『マックス・ヴェーバー研究の現在: 資本主義・民主主義・福祉国家の変容の中で』

39「ここで提示されているのは、人格性なるものが体験と動機と行為の現実連関から超越する何かの実体ではないとする見方であり、この見方は、前段で見たクニースにおける個体概念の実体化(人間学的流出論)への批判とたしかに一体的です。このような観点からヴェーバーは人格性を、当の人物を通常はつねに駆動している動機の型として、すなわち「「恒常的動機」の複合体」として、体験と動機と行為の現実連関におけるその実質的意味から捉えるのでした」
 

小倉健太郎「アニメ・マシーンとしてのフライシャーの回転式撮影台」『映像学』2021年, 105巻, p.5-26

本文

日本のアニメを論じる際に、しばしば強調されてきたのが平面性だ。アニメの平面性を強調する議論は枚挙にいとまがない。こうした議論では、アニメの平面性はときに日本の伝統美術と結び付けられ、日本固有の性質とされる。日本文化研究者のトーマス・ラマールはこうした議論と距離を置きながらも、やはりアニメの平面性に着目している。彼はセル・アニメーション制作に用いられる撮影台に特有の多平面を層状に合成する構造を「アニメ・マシーン」とし、アニメ・マシーンによって生み出される運動を「アニメティズム」としている。アニメティズムという概念は、とりわけ美学的にアニメを分析する際にはしばしば言及される概念となっている。

しかし、彼がアニメティズムの例として挙げる大友克洋監督の『スチームボーイ』(2004)は、じつのところアニメ・マシーンとは異なる構造によって生み出されている。こうした構造の先行例としてはフライシャー・スタジオが用いた回転式撮影台を挙げることができる。本論は、回転式撮影台の構造が作り出す独自の映像をフライシャー的空間と定義し、それが日本のアニメにも現れていると主張する。フライシャー的空間は、アニメ・マシーンという議論に欠けているものを浮き彫りにする。平面性に囚われないアニメの可能性がそこには表れているのだ。

宮本裕子、2020『フライシャー兄弟の映像的志向 混淆するアニメーションとその空間』水声社

 

小田玄紀著『1時間でわかるビットコイン入門 〜1円から送る・使う・投資する〜』(2018)

 

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◆値下がりするときにもリターンのチャンス
ビットコイン投資のリスクとは
ビットコイン投資。未来はどう広がる?

第5章 ビットコインは「ここで」「こう買う」
◆安心して売買できる取引所を選ぶ
◆口座を開いて買ってみよう

『SFマガジン』6月号, Vol.62 No.745, 2021

 

異常論文特集監修:樋口恭介
柴田勝家の異常論文を読んだ樋口恭介が「異常論文アンソロジー読みてえ」とツイートし、それを読んだ異常編集者・塩澤快浩が「SFマガジンでお願いできますか? 特集で」と返信したことに端を発する、ジョークのような異常企画がついに実現。異常作家たちの異常伝説が、いま、ここから始まる――

【異常論文】「INTERNET2」木澤佐登志「裏アカシック・レコード」柞刈湯葉「インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ」陸秋槎「オルガンのこと」青山新「『多元宇宙的絶滅主義』と絶滅の遅延――静寂機械・遺伝子地雷・多元宇宙モビリティ」難波優輝「火星環境下における宗教性原虫の適応と分布」柴田勝家「SF作家の倒し方」小川哲「ザムザの羽」大滝瓶太「樋口一葉の多声的エクリチュール――その方法と起源」倉数茂「無断と土」鈴木一平+山本浩貴(いぬのせなか座)
【連載】「アグレッサーズ 第六話 激闘 戦闘妖精・雪風 第4部」神林長平「マルドゥック・アノニマス〈第36回〉」冲方丁「空の園丁 廃園の天使3〈第8回〉」飛浩隆「マン・カインド〈第16回〉」藤井太洋「幻視百景〈第31回〉」酉島伝法
【連載コミック】宮崎夏次系《短篇シリーズ》 第2回「羅生メン」
【読切】「悲観人間は心配しない "The Pessimistic Man"」上遠野浩平「修正なし」サラ・ゲイリー/鳴庭真人訳「ラトナバール島の人肉食をおこなう女性たちに関する文献解題からの十の抜粋」ニベディタ・セン/大谷真弓訳「殲滅の代償」デイヴィッド・ドレイク/酒井昭伸

 

大森望,伴名練編『2010年代SF傑作選 2』(2020)

 

2010年代SF傑作選2 (ハヤカワ文庫JA)

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  • 発売日: 2020/02/06
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ハヤカワSFコンテストと創元SF短編賞という2つの新人賞が創設された2010年代。ジャンル外の文学賞でも評価される宮内悠介、高山羽根子、小川哲をはじめ、酉島伝法、柴田勝家、倉田タカシなど両賞から輩出された数多くの才能、電子書籍やウェブ小説出身の藤井太洋、三方行成、そして他ジャンルからデビューの野崎まど、小田雅久仁――日本SFの未来を担う10作家を収録する、2010年代ベストSFアンソロジー第2弾。

小川 哲「バック・イン・ザ・デイズ」/宮内悠介「スペース金融道」/三方行成「流れよわが涙、と孔明は言った」/酉島伝法「環刑錮」/高山羽根子「うどん キツネつきの」/柴田勝家雲南省スー族におけるVR技術の使用例」/藤井太洋「従卒トム」/野崎まど「第五の地平」/倉田タカシ「トーキョーを食べて育った」/小田雅久仁「11階」