工藤庸子, 岩永雅也著『大人のための「学問のススメ」』(2007)

 

大人のための「学問のススメ」 (講談社現代新書)

大人のための「学問のススメ」 (講談社現代新書)

 

学問の世界をもう一度のぞいてみませんか?子どもばかりを「学ばせる」社会は不健全。大人ならではの「結晶性知力」を活かしてみては? 社会人教育の矛盾を衝き、理想の教室風景を描く、痛快生涯教育論。

前口上 大人こそ学んでみたら?
第1章 問題提起―「わたしも主婦です!」
第2章 市場原理と生涯学習
第3章 大人のための「教育と国家」論
第4章 大人の知力は結晶性
第5章 教養と学問と研究と
第6章 「大人の教育」の現場から
第7章 海外の生涯学習事情
第8章 持続する社会のための教育論

 

松本健太郎著『デジタル記号論-「視覚に従属する触覚」がひきよせるリアリティ』(2019)

 

デジタル記号論?「視覚に従属する触覚」がひきよせるリアリティ

デジタル記号論?「視覚に従属する触覚」がひきよせるリアリティ

 

私たちは一日にどれくらいポータブル端末に触れているだろう。そこでは視覚以上に触覚が重要な役割を果たしている。いまや全く新しい感性が生まれていると言ってもいい。気鋭のメディア・記号学者が,デジタル化時代のこのリアリティを鮮やかに描出。

序章 デジタル時代の技術化されたイマジネーション

 第・部 記号とメディアの現代的な関係性を考える
 
第1章 バックミラーのなかのメディア文化
    ―テクノロジーの隠喩的理解をとらえなおす
 第一節 バックミラー越しにみえる「今」
 第二節 メディアテクノロジーの隠喩的理解・―フータモの「トポス」概念
 第三節 メディアテクノロジーの隠喩的理解・―タークルの「インターフェイス・バリュー」
 第四節 メディアテクノロジーの隠喩的理解・―ユールの「カジュアル革命」
 ●結びにかえて
 
第2章 メディアテクノロジーが陶冶する想像力の現在
    ―「予めの論理」と「象徴の貧困」
 第一節 感覚器官とメディアテクノロジーのリコネクト
 第二節 記号論批判―そのプログラムの超時代性の問題
 第三節 記号の作用/メディアの作用
 第四節 記号的な想像力を陶治するメディアテクノロジー
 第五節 「予期」のためのテクノロジー
 ●結びにかえて

第3章 メディアの媒介性と、その透明性を考える
    ―「テクノ画像」概念を再考する
 第一節 写真の透明性がもたらしたもの
 第二節 “無媒介性の錯視・を生成するデジタルテクノロジー
 第三節 錯覚に紐づけられた触覚
 ●結びにかえて

第4章 私たちはどのように写真をまなざすのか
    ―言語との差異を中心に
 第一節 写真は「新たな言語」か?
 第二節 写真による覇権的なコードの交代
 第三節 言語と映像
 第四節 写真の走査プロセスをめぐって―「言語的視覚」vs「映像的視覚」
 第五節 身体と装置との接合
 第六節 写真と遠近法
 第七節 〈人間の眼〉と〈機械の眼〉の葛藤
 ●結びにかえて
 
 第・部 視覚と触覚の現代的な関係性を考える

第5章 タッチパネル考―画面との接触が求められる現代
 第一節 「眼の快楽」と「手の使用」をつなぐもの
 第二節 映像世界を手許に引き寄せることの意味
 第三節 「簡易化」がもたらす触覚の変容
 第四節 タッチパネルをつうじた映像世界のコントロール
 第五節 ポスト写真時代における触覚的リアリティのゆくえ
 ●結びにかえて―デジタル時代のリアリティ

第6章 「接続される私」と「表象される私」
    ―記号論/メディア論の間隙で考えるゲーム
 第一節 二つの「延長」概念、および二つの二重分節論的モデル
 第二節 コントローラによって「接続される私」
 第三節 視聴覚記号によって「表象される私」
 第四節 二つの「私」の等価性、およびインタラクティヴィティ
 ●結びにかえて

第7章 スポーツゲームの組成
    ―それは現実の何を模倣して成立するのか
 第一節 二つの「私」の等価性と、その非対称性
 第二節 インターフェイスの記号性
 第三節 スポーツゲームを形成する三つのシミュレーション
 第四節 ルール/動作のシミュレーションを補助する視覚的レトリック
 第五節 ゲームの勝者/受益者とは誰か
 第六節 スポーツゲームにおける主体の分裂的構造
 第七節 「一人称の死」のシミュレーション
 第八節 現実とゲームの相互形成性
 第九節 記号的想像力と媒介テクノロジーの間隙で
 ●結びにかえて

 第・部 空間と身体の現代的な関係性を考える

第8章 ポケモンGOでゲーム化する世界
    ―画面の内外をめぐる軋轢を起点として
 第一節 ポータブルデバイスが牽引する「予期」と「移動」
 第二節 ゲームにおける「意味論的次元」と「統語論的次元」
 第三節 ポケモンGOにおける統語論的関係の優位性
 第四節 ポケモンGOでゲーム化する世界
 ●結びにかえて―ポケストップに嵌め込まれた写真の意味

第9章 拡大される細部
    ―マイケル・ウルフとダグ・リカードの写真集を比較する
 第一節 Googleストリートビューにおける都市空間のイメージ喚起性
 第二節 Googleストリートビューにおける時空間の編成
 第三節 プンクトゥム―写真のなかの言語化不可能な細部
 第四節 Googleストリートビューにおける「細部」の事後的発見
 ●結びにかえて

第10章 テクノロジーによる「行為」のシミュレーション
    ―トリップアドバイザーを題材に
 第一節 トリップアドバイザーにおける写真データのフロー
 第二節 記録と予期の間隙で
 第三節 行為や体験をシミュレートするテクノロジー
 ●結びにかえて―「シミュレーション」概念から再考するバックミラー

終章

引用・参考文献
事項索引
人名索引

 

てらさわホーク著『マーベル映画究極批評-アベンジャーズはいかにして世界を征服したのか?』(2019)

 

マーベル映画究極批評 アベンジャーズはいかにして世界を征服したのか?

マーベル映画究極批評 アベンジャーズはいかにして世界を征服したのか?

 

忖度なし! 誰も書けなかった本邦“初”の「マーベル・シネマティック・ユニバース」評論書。期待すらされなかった無名のヒーロー映画から、世界を席巻する伝説が始まった! 予算わずか1400万ドル。かつて倒産の危機に瀕したスタジオと、ドラッグで人生を棒に振りかけた役者が、無名のヒーロー映画『アイアンマン』で起死回生のヒットを飛ばす。ここから、厳格な管理体制を敷くディズニーの下で、無謀なプランだったはずの「マーベル・シネマティック・ユニバース」は拡大していく。ときにスタジオと役者・監督との間で軋轢が生じながらも、わずか10年でいかにして歴代No.1の映画シリーズとなったのか。MCUは、映画産業を、映像表現を、どう変えたのか。そして、映画のなかでヒーローたちはアメリカ社会の“何”と戦ってきたのか。アメコミ映画の第一人者・てらさわホークが、『アイアンマン』から『アベンジャーズ/エンドゲーム』までのMCU22作品と、マーベル映画がもたらした功罪を徹底評論する。

 

野田ユウキ著『図説 シンギュラリティの科学と哲学』(2019)

 

 

図説 シンギュラリティの科学と哲学

図説 シンギュラリティの科学と哲学

 

未来予測は必ず外れるのか!?技術的シンギュラリティは、人工知能が文明に対して引き起こすと予想される未来予測である。AIの登場でハードウェアとソフトウェアの発展は、いよいよ自立的進化を始めようとしている。シンギュラリティの理解に必要な理論と考え方を解説する。

 

港千尋著『インフラグラム-映像文明の新世紀』(2019)

 

インフラグラム 映像文明の新世紀 (講談社選書メチエ)

インフラグラム 映像文明の新世紀 (講談社選書メチエ)

 

写真の誕生から一八〇年。「光による描画」の技術は、スマートフォンから人工衛星、地図、医療、娯楽から政治、軍事、戦争まで、情報社会を動かすインフラとなった。視線は労働し、“わたし”はデータ上に増殖している。映像は、監視社会を強化するいっぽうで、他者が生きた時間を再起させる。わたしたちの現在を、生と死を、そして自由とは何かを考える、眼差しの歴史。

01 神経エコノミーの誕生
02 インフラグラムの時代
03 軍事の映像人類学
04 空の眼
05 記憶の身体

 

熊倉正修著『日本のマクロ経済政策-未熟な民主主義の帰結』(2019)

 

日本のマクロ経済政策: 未熟な民主政治の帰結 (岩波新書)

日本のマクロ経済政策: 未熟な民主政治の帰結 (岩波新書)

 

日本の為替,金融,財政のマクロ経済政策全般を俯瞰し,独自のデータ分析で徹底的にその問題点を解明する.円安誘導による景気浮揚,財政ファイナンスである異次元緩和,政府の責任感の欠如で先送りされる財政再建,最終的にその帳尻合わせを強いられるのは国民だ.現実を直視せずして日本のマクロ経済政策の正常化は望めない.

序 章 漂流する日本のマクロ経済政策

第1章 通貨政策1――日本はなぜ為替介入から卒業できないのか
 1 外国為替市場介入と為替レート
 2 日本の為替介入とその問題点
 3 歯止めのない為替介入の弊害
 4 諸外国の為替介入

第2章 通貨政策2 ――投資ファンド化が進む外国為替資金特別会計
 1 外国為替資金特別会計のしくみ
 2 特別会計改革と外為特会の現状
 3 投資ファンド化が進む外国為替資金
 4 諸外国の外貨準備の管理体制

第3章 金融政策――デフレ対策という名の財政ファイナンス
 1 日本は本当にデフレだったのか
 2 物価はなぜ安定していたのか
 3 金融政策と財政政策の関係
 4 中央銀行を守るのは誰か

第4章 財政政策――「経済成長なくして財政再建なし」?
 1 政府の経済成長目標は現実的か
 2 高齢化は財政危機の主因ではない
 3 政府の財政健全化目標の変化
 4 国民を欺く政府

第5章 マクロ経済政策と民主主義――日本が生まれ変わることは可能か
 1 既定路線の政策の先に何があるか
 2 持続的なマクロ経済政策の要件
 3 なぜ日本では民主政治が機能しないのか
 4 日本は変わることができるか

あとがき
参考文献

 

山岡淳一郎著『生きのびるマンション-〈二つの老い〉をこえて』(2019)

 

生きのびるマンション: 〈二つの老い〉をこえて (岩波新書)

生きのびるマンション: 〈二つの老い〉をこえて (岩波新書)

 

建物の欠陥,修繕積立金をめぐるトラブル,維持管理ノウハウのないタワマン…….さまざまな課題がとりまくなか,住民の高齢化と建物の老朽化という「二つの老い」がマンションを直撃している.廃墟化したマンションが出現する一方,住民たちの努力でコミュニティを作り,資産価値を高めた例も.何が明暗を分けたのか.豊富な取材例から考える.

第一章 何が「スラム」と「楽園」を分けるのか
 認知症と管理組合/「新築・売り抜け」と空き家の増加/七年がかりで空室状態の相続住居を処分/廃墟マンション解体の苦悩/銃弾,不審火,変死体……スラム化の実態/管理組合の役割と「談合・リベート」問題/鎌倉の老朽マンションが「楽園」に/「マンション管理条例」の広がり/スクラップ&ビルド推進の政策潮流/現実とかけ離れた建て替え誘導策/第三者管理者方式の限界

第二章 大規模修繕の闇と光
 掠め取られる修繕積立金/「あなた,責任とれるのですか」談合・リベートのからくり/「営業協力費」「情報提供料」名目でキックバック/管理組合理事に「内容証明」を送りつけた建築設計事務所/管理組合が悪質コンサルタントを撃退/談合・リベートとの決別を宣言したが……/「何でもあり」だった改修業界/国交省調査の大規模修繕「相場」は高いか,安いか/公募「条件」による業者選定の是非を問う/目覚めた管理組合,「現地調査」と「質疑」で業者を選ぶ/結局は「人」,現場代理人がキーパーソン

第三章 欠陥マンション建て替えの功罪
 建物の不具合が法的な「瑕疵」か見極める/横浜の傾斜マンション,報道で三井不動産が態度一変/発覚までの管理組合と三井の紆余曲折/住民が一つになれるのは全棟建て替え/飛び火する杭未達問題/ずさんな建築確認,工法と地層のミスマッチ/真相究明のバトンは国から横浜市へ/「議決権放棄」のプレッシャー/封印された危険性の核心部分/耐震偽装事件――国の建築確認の責任問わず/安全なら建て替えでも補修でも資産価値は変わらない

第四章 超高層の「不都合な真実
 「容積率の緩和」という錬金術/二〇二〇年東京五輪後の不動産危機/武蔵小杉,東京湾岸の超高層化とインフラ整備の遅れ/大規模修繕ではなく「多元改修」へ/外壁補修に「元施工」の大手ゼネコンを巻き込む/超高層独特の「ひび割れ」二〇〇年スパンで修復/巨額の工事発注の「透明性」を保つ/次々と迫る多元的な改修/市街地再開発マンション,上層と低層で別々に大規模修繕/多数の住民よりも少数の商業施設権利者の議決権のほうが重い?/ロンドン,広島,東京,所沢……超高層火災の怖ろしさ/地震で孤立するタワーマンション

第五章 コミュニティが資産価値を決める
 日本では,なぜ国民が住宅を持って資産を失うのか/長く住み続ける工夫が未来を変える/集いのスペースを増やし,井戸を掘り,住民間の対話で楽園化/管理組合の法人化が鍵を握る/日本初,訪問看護ステーションを設けたタワーマンション/経営的視点で管理組合の将来ビジョン策定/ロシアの国営放送記者が取材に来たマンション/バブルに翻弄された建て替え計画/「草の根」のコミュニケーションが原動力/国交省のリフォーム事業で「外断熱改修」/民間の知恵で耐震化のコストを下げる/用途転換と併せたリノベーションで活路を開く/住宅を社会的資産とする「建築基本法」の提言


参考文献
あとがき