『現代思想 2019年6月号 特集 加速主義-資本主義の疾走、未来への〈脱出〉』

 

現代思想2019年6月号 特集=加速主義――資本主義の疾走、未来への〈脱出〉

現代思想2019年6月号 特集=加速主義――資本主義の疾走、未来への〈脱出〉

 

 加速主義という新たな思想的潮流。そこでは根底的な社会変化を引き起こすために、資本主義制度、あるいはそれを歴史的に特徴づけてきた技術的プロセスを、あえて拡大し、再利用し、加速するべきであるとされる。閉塞感に満ちた現代社会を打破するような不思議な力によって、それは私たちを否応なく変えてくれるのではないか、あるいは変えてしまうのではないか――そういった来たるべきなにかへの期待と不安が渦巻いているなか、加速主義のもつ可能性を、その新反動主義の一面も含めて明らかにする。

【討議】
加速主義の政治的可能性と哲学的射程 / 千葉雅也+河南瑠莉+S・ブロイ+仲山ひふみ

【加速主義の源流】
暗黒啓蒙(抄) / N・ランド/五井健太郎訳・解題

【資本主義のはざまで生きる】
転形期の未来――新反動主義かアシッド共産主義か / 水嶋一憲
気をつけろ、外は砂漠が広がっている――マーク・フィッシャー私論 / 木澤佐登志

【継承と共鳴】
さまよえる抽象 / R・ブラシエ/星野太訳・解題
加速主義から思弁的実在論へ――ブラシエとグラント / 浅沼光樹
死の向こう側 / 小倉拓也

【解放への道程】
『加速主義読本』序論(抄) / R・マッカイ+A・アヴァネシアン/小泉空訳
加速主義の系譜学――『加速主義読本』序論解題 / 小泉空
ポスト労働社会の想像と四つの要求 / 川村覚文

【幻視される特異点
ゲーデル・シンギュラリティ・加速主義――近代以降の世界像の変容とその揺り戻し / 丸山善
The System of Hyper-Hype Theory-Fictions / 樋口恭介

【複数化する未来線】
啓蒙の終わりの後に、何が始まろうとするのか? / Y・ホイ/河南瑠莉訳・解題
ブロメテアニズム / A・ギャロウェイ/増田展大訳・解題

フェミニズムによる応答】
プロメテアン労働とドメスティック・リアリズム / H・へスター/三浦尚仁+依田富子訳

【ここにある〈出口〉】
「大きな思想」と「小さな日常」が乖離するとき――ダークな思想を持った人たちの演出について / C・ローウィー
ティーヴ・グッドマン諸作における人類消滅後の全自動ホテルが示すもの / 髙橋勇人

 

連載●デミウルゴス●第三回
見取り図(三) / 磯崎新

連載●科学者の散歩道●第五九回
揺れる学界諸事――「戦後成長」の終焉とグローバル化 / 佐藤文隆

【研究手帖】

 

田島悠来著『「アイドル」のメディア史-『明星』とヤングの70年代』(2017)

 

「アイドル」のメディア史: 『明星』とヤングの70年代

「アイドル」のメディア史: 『明星』とヤングの70年代

 

新御三家」や「花の中三トリオ」などが誌面を飾るグラビアページや、ポスト団塊の世代のヤングたちが活発に議論をかわす読者ページの分析から、アイドル文化装置としての『明星』を解き明かす。

第1章 序論―『明星』から紐解く「アイドル」史
第2章 一九七〇年代の社会状況と『明星』
第3章 誌面における「アイドル」のイメージ
第4章 読者と「アイドル」との関わり方
第5章 雑誌の作り手側にとっての「アイドル」
第6章 『明星』と「アイドル」の変容
終章 結論

 

岩波敦子著『誓いの精神史-中世ヨーロッパの〈ことば〉と〈こころ〉』(2007)

 

言われた言葉には魔が宿る。誓いに込められた中世人の世界観を読み解く。誓いの言葉はなぜ間違えてはいけないのか。なぜ文書よりも言葉が重視されたのか。決闘の勝ち負けによって真偽が定まり、目撃していなくても事件の証人になることができる、その根拠はどこにあるのか。西洋中世の特異な習俗から、中世人の「こころ」に迫る。

第1章 ことばの射程
第2章 「誓い」の場
第3章 人を信じる「誓い」
第4章 人を縛る「誓い」
第5章 「誓い」の位相

 

木澤佐登志著『ニック・ランドと新反動主義-現代世界を覆う〈ダーク〉な思想』(2019)

 

 思想の〈ダーク〉な最前線、ニック・ランド
新反動主義」あるいは「暗黒啓蒙」と呼ばれる、リベラルな価値観に否を突きつける暗く新たな思想潮流は、現代において陰に陽に存在感を示しつつある。本書では、その捉えがたい核心に三人の重要人物から迫っていく―ピーター・ティール、カーティス・ヤーヴィン、そしてニック・ランド。とりわけ哲学者ランドの思想に分け入ることが、本書のさらなる目論見である。ランドと、彼が率いた研究グループCCRUの影響圏は、「加速主義」「思弁的実在論」など近年の思想動向から、多様な領域における文化的プレイヤー、「ヴェイパーウェイヴ」のような文化現象にまで広範に及ぶ。〈ダーク〉な思想に目を向けて、初めて見えるものがある。

はじめに

1 ピーター・ティー

ピーター・ティールとは誰か
ルネ・ジラールへの師事
学内紛争にコミットする
主権ある個人、そしてペイパル創業へ
ニーチェ主義とティー
暗号通貨とサイファーパンク
「イグジット」のプログラム
「ホラー」に抗う
啓蒙という欺瞞、そして9・11

2 暗黒啓蒙

リバタリアニズムとは何か
「自由」と「民主主義」は両立しない
カーティス・ヤーヴィンの思想と対称的主権
新官房学
近代主義とその矛盾
人種問題から「生物工学の地平」へ

3 ニック・ランド

啓蒙のパラドックス
ドゥルーズ&ガタリへの傾倒
コズミック・ホラー
グレートフィルター仮説
クトゥルフ神話アブストラクト・ホラー
死の欲動の哲学
CCRUという実践
CCRUとクラブミュージック
ハイパースティション
思弁的実在論とニック・ランド
カンタン・メイヤスー
レイ・ブラシエ
ニック・ランドの上海

4 加速主義

加速主義とは何か
左派加速主義とマーク・フィッシャー
右派加速主義、無条件的加速主義
トランスヒューマニズムと機械との合一
加速主義とロシア宇宙主義
ロコのバジリスクと『マトリックス
ヴェイパーウェイヴと加速主義

 

マイケル・L・ロス著, 松尾昌樹, 浜中新吾訳『石油の呪い-国家の発展経路はいかに決定されるのか』(2012=2017)

 

石油の呪い――国家の発展経路はいかに決定されるか

石油の呪い――国家の発展経路はいかに決定されるか

 

中東地域ではなぜ民主化が進展しないのか――。
石油は政治、経済、社会にいかなる影響を及ぼすのか、その深刻さを計測し処方箋を提示する画期的な一冊。

序文
日本語版への序文
第1 章 諸国民の富の逆説
第2 章 石油収入にまつわる問題
第3 章 石油の増加、民主主義の後退
第4 章 石油は家父長制を永続させる
第5 章 石油が引き起こす暴力
第6 章 石油、経済成長、政治制度
第7 章 石油に関するよい知らせと悪い知らせ
解題

 

光岡寿郎, 大久保遼編著『スクリーン・スタディーズ-デジタル時代の映像/メディア経験』(2019)

 

スクリーン・スタディーズ: デジタル時代の映像/メディア経験

スクリーン・スタディーズ: デジタル時代の映像/メディア経験

 

「写真」「映画」「テレビ」あるいは「携帯電話」といった「ジャンル」によって分断されて見えなくなってしまった映像/メディア経験の実相を,私たちの日常において時間的空間的に増殖し遍在し続けるスクリーンという新たな視座=通奏低音から捉え直す試み.

序 章 Mind the gaps, fill in the gaps――2020年代の映像文化を迎える前に(光岡寿郎)

第1部 スクリーンという方法
第1章 メディア研究におけるスクリーンの位相――空間,物質性,移動(光岡寿郎)
第2章 遍在するスクリーンが媒介する出来事――メディア・イベント研究を補助線に(飯田 豊)
第3章 液状化するスクリーンと観客――「ポスト観客」の映画文化(渡邉大輔)
第4章 アーカイブパラドックス(林田 新)

第2部 歴史のなかのスクリーン
第5章 明治期のヴァーチャル・リアリティ――非分節ショットへの回帰(上田 学)
第6章 オフ・スクリーンの映像文化史――大正・昭和期の複合施設型映画館(近藤和都)
第7章 パテ・ベビーというシステム――映像文化史の視座から(松谷容作)
第8章 マンガ・プロジェクション――戦後日本大衆文化におけるマンガ・劇画のスクリーン映写(鷲谷 花)
第9章 1970年代のビデオ技術受容とセクシュアリティ(溝尻真也)

第3部 スクリーンの現在へ
第10章 スクリーン・プラクティスの再設計――舞台表現におけるスクリーンの問題(大久保遼)
第11章 触覚的写真――モバイル・スクリーンの人類学(金暻和)
第12章 パブリック・ビューイング――スクリーンに向き合わない若者たち(立石祥子)
第13章 「映像ならざるもの」の映像表現――災害を表現すること(関谷直也)
第14章 光と音を放つ展示空間――現代美術と映像メディア(馬定延)
第15章 電子のメディウムの時代,デジタル画像の美学(gnck)
第16章 スクリーンの消滅――バイオアート/テクノロジーの歴史を事例として(増田展大)

Remind the screens, and reframe the screens――あとがきに代えて(大久保遼)

スクリーン・スタディーズを知るためのブックガイド

17 大久保『映像のアルケオロジー

48, 66 立石「パブリック・ビューイング-メディア・イベントの再イベント化」飯田・立石編『現代メディア・イベント論-パブリック・ビューイングからゲーム実況まで」 

現代メディア・イベント論: パブリック・ビューイングからゲーム実況まで

現代メディア・イベント論: パブリック・ビューイングからゲーム実況まで

 

49, 65 スティグレール『技術と時間3ー映画の時間と「難‐存在の問題」』

49, 66 谷島「ベルナール・スティグレールの「心権力」の概念ー産業的資源としての「意識」をめぐる諸問題について」松本編『理論で読むメディア文化』

59, 65 松谷「都市のハロウィンを生み出した日本社会ー需要される偶有的なコミュニケーション」吉光他編『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学

60, 65 永井『ロックフェスの社会学

66 富田『ポスト・モバイル社会』

ポスト・モバイル社会―セカンドオフラインの時代へ

ポスト・モバイル社会―セカンドオフラインの時代へ

 

 81, 87 モルモット吉田『映画評論・入門!ー観る、読む、書く』

映画評論・入門! (映画秘宝セレクション)

映画評論・入門! (映画秘宝セレクション)

 

85, 88 三浦「二つのリアリズムと三つの自動性ー新しいシネフィリーのために」『現代思想』1月号「特集=ポスト現代思想」, 2016年. 

現代思想 2016年1月号 特集=ポスト現代思想

現代思想 2016年1月号 特集=ポスト現代思想

 

 217 近藤『なつかしの関西ラブホテル60年』

なつかしの関西ラブホテル60年 裏のうらのウラ話

なつかしの関西ラブホテル60年 裏のうらのウラ話

 

 218 鈴木『「AV女優」の社会学

 218 鈴木『ラブホテルの力』

ラブホテルの力―現代日本のセクシュアリティ (広済堂ライブラリー)

ラブホテルの力―現代日本のセクシュアリティ (広済堂ライブラリー)

 

 

広田照幸著『若者文化をどうみるか?-日本社会の具体的変動の中に若者文化を定位する』(2008)

 

若者文化をどうみるか?―日本社会の具体的変動の中に若者文化を定位する

若者文化をどうみるか?―日本社会の具体的変動の中に若者文化を定位する

 

序論 若者文化をどうみるか
第1章 若者のアイデンティティと友人関係
第2章 居場所化する学校/若者文化/人間関係-社会の一元化を乗り越えるための課題
第3章 若者文化と学校空間-学校の遮蔽性と生徒集団の統合性はどう変容したか
第4章 若者の性の現在と指導者ができること-学校における性教育をめぐって
第5章 弱くなる「ギャル」-「強めの鎧」と「がんばる」という適応
第6章 文化は労働につれ、労働は文化につれ-ヤンキー文化とブルーカラー労働の相互関係を事例に
終章 学校と若者文化-ささやかな提言
ブックガイド 何を知り、何を読み、何を考えるべきか